【初心者対応】甘いトマトの育て方【塩を加えた灌水で簡単糖度アップがおすすめ!】

質問する人

家庭菜園でトマトを栽培しています。

甘いトマトを収穫したいので、水はほとんど与えない育て方をしています。
それなのに、苗の元気がなく、収穫できる果実の数は少なく、小さく、あまり美味しいトマトになりません。
みんなが言うとおり、水は控えて栽培しているのに、どうして甘いトマトにならないのでしょうか?

甘いトマトの育て方を教えて下さい。

このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。

 

この記事を書いている僕は、17年間トマト栽培を行っております。

国内の種苗会社や、農業生産法人で北海道を中心に海外も含め、トマト栽培やトマトの研究を行い、現在は札幌市でトマト農家をしています。

 

このブログでは、自分の栽培経験を生かし、生産者の方や家庭菜園の方の疑問、質問に答える形でトマトの育て方等と紹介しています。

 


 

トマトを甘くするために、水をやらずに管理して、失敗する方の話をよく聞きます。

 

たしかに、灌水量を少なくして栽培する栽培管理は、トマトを甘くするために有効です。

 

しかし、灌水量の減らし方を間違えると、

 

トマトを甘くするどころが、茎は細く、葉は黄色く、花が咲いても果実にならず、何個かの小さい果実が残念そうに実っているように、

 

栽培自体がうまくいかなくなります。

 

 このような結果になる人の栽培方法には、共通する点があります。

 

それは、

  • その①:トマトは水をやらないほうが良く育つと思って栽培管理している
  • その②:苗を植えた直後から水をやらない

ということです。

 

もし、甘いトマトを収穫できず、上の条件に当てはまる方がいたら、この記事を最後まで読んで、参考にしてみてください。

 

最初の章では、タイトルのとおり、栽培している途中からでも行える、甘いトマトの育て方を解説しています。

条件が合い、挑戦してみたい方はぜひ参考にしてください。

 

今回の記事では、すぐにできる甘いトマトの育て方の方法を含め、高糖度トマトのつくり方、トマトが高糖度になるメカニズムを解説します。

 

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今日から始める甘いトマトの育て方

今日から始める甘いトマトの育て方

 

 甘いトマトを収穫する事は簡単ではありません。

 

どうして甘くなるのか?

この時期はどのように水をやったらいいのか?

どの種類の肥料をどの程度あたえたらいいのか?

など、多く知識と経験と必要になります。

 

しかし、

「もう難しい事はいいから、とにかく今栽培しているトマトを甘くしたいんです。」

と思っている方、多いと思います。

 

そこで、

この章では、栽培の途中からでできて、簡単に、なるべく早く、とっても甘いトマトを収穫する方法を、最低限の内容で紹介します。

 

今後の灌水に全て「塩」を加えてください

 

すぐに始められる、トマトを甘くする栽培方法は、

 灌水に塩を加える事です。

 

方法の要点は以下のとおりです。

  • 使用する塩は、普通の塩(にがり等含んでいないもの)を利用して、0.2%の割合になるように加える
  • 液肥で灌水する場合は、肥料を加えさらに塩を0.2%の割合で加える
  • 灌水の頻度、1回の量は、いつも行っている方法でOK
  • 一度、塩水を加えた水の利用を始めた後は、その後全ての灌水で同じ割合で塩を加えて、灌水を行う

 

この方法を紹介したときに、よく質問される事があります。

 

 塩?!甘くするなら砂糖の方がいいのでは?

それが、塩なんです!

 

 塩加えて、しょっぱくならないの?

安心してください、甘くなります。

 

 スイカに塩つけて食べると甘く感じるけど、そういう理屈なの?

いいえ、トマトを食べる時は塩の味はしません。

 

 灌水する水に塩を入れても、トマトの果実に塩が含まれるわけではありません。

 

塩を含む水で灌水する事で、トマトの根が吸収できる水の量が減って、トマトの味が濃くなって、甘くなる
こういうイメージです。

塩水灌水を行える条件を確認

 

塩を水に加えて灌水方法は、簡単に甘くできる育て方ですが、

栽培後に、土に塩分が残って、使いまわししにくい事や、トマトの株にストレスがかかるため、

 

トマトを甘くする方法は、以下の条件に当てはまる場合で行ってください

 

  • プランターなどの容器と培土を利用していて、その栽培が終わった後に使った培土を使いまわす予定がない
    (畑で栽培している場合は、栽培後に塩分が残り土が痛む場合があるのでオススメできません)
  • 3段目以降の花が咲いている(それまでは通常管理で行う)
  • ゴルフボール大以上の大きさの果実がすでに実っている
  • 1番高い位置に咲いている花の20cm下の茎(主茎)が、タバコよりも太い(茎が細い場合は十分な太さになるまで、灌水追肥を行い勢いをつける)

 

期待できる効果と、うまくいかない時の対策

 

栽培している品種の種類や、栽培環境、管理にもよりますが、

 

 2〜4度の糖度アップが望めます。

 

糖度が2度上がると、食べた時にはっきりと甘さが強い事を感じる事ができます。

 

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うまくいかない時に考えられる原因と対策

 

よくある症状:その①

  •  収穫できた果実が極端に小さく、食味が悪い

塩水の灌水を始める時、トマトの苗に十分な草勢がない事が考えられます。

 

対策

灌水、追肥の頻度を高めて、苗の状態を回復してから塩水灌水を始める

 

よくある症状:その②

  • 収穫して食べてみても、いつも変わらない糖度

灌水の頻度が少なく、塩の効果が出ていない事が考えられます。

 

対策

灌水頻度を多くするか、1回の灌水に加える塩の濃度を高める(0.4%を上限に)

処理開始2週間後に、果実肩部の色の変化を見て濃い緑色になっていなければ、頻度か濃度を高める

 

とにかく早くトマトを甘くするための、栽培管理を始めたい方は、この章を読んだ後にすぐに、紹介している栽培方法を始めてみてください。

 

次の章からは、甘いトマトの育て方について、詳細に解説していますので、より詳しく知りたい方は、続きの記事も参考にしてください。

 

甘いトマトを育てるために、まずは、「なぜ甘くなるか」を知る

甘いトマトの育てるために、なぜ甘くなるかを知る

 

甘いトマトの育て方を行う時に、

まず、重要な事は、

 

  どのような仕組みで、トマトが甘くなるのかを知る事です。

 

トマトの栽培環境は、栽培するの条件によってさまざまです。

 

何かうまくいかない事があった時、

参考書や、ネット上の情報だけでは、その対策の正解を見つける事はむずかしいです。

 

その時、甘くなる仕組みを知っていると、適切な管理を行う事につなげる事ができます。

 

それでは解説を始めます。

 

甘いトマトは果実が小さくなる

 

トマトの糖度を上げるには、

 

収穫する果実へ流れる水分(根から吸収した水)を少なくする事が必要です。

 

なぜなら、果実内の糖分(甘さの素)を濃縮することで、糖度が上がるからです。

 

そして、

 

果実の水分が少ないほど、糖度は上がり、逆に果実の大きさ(重さ)は小さくなります。

 

なぜなら、トマト(大玉)果実の構成要素の90%以上は水分だからです。

 

こちらの資料はトマトの重さと糖度の関係を示したものです。

トマト高糖度栽培時の果実の重さと糖度の関係

 

だれもが、大きい果実で、高糖度のトマトを収穫したいと思うのではないでしょうか?

 

しかし、

 果実の糖度と、大きさは反比例するのがトマトの生理生態なのです。

 

この事をしっかり、理解して甘いトマトづくりに取り組みましょう。

 

なぜ、甘い果実は小さくなるのか?:カルピスで例えると

 

トマトの糖度が上がる仕組みを説明する際に、例えとして紹介すると、わかりやすい飲み物があります。

 

 それは、「カルピス」です。

コップに入ったカルピス

 

例えば、ABのコップにそれぞれ、20mlの原液カルピスが用意されていたとします。

Aのコップには、
水、100mlを加え、計120mlのカルピス水
Bのコップには、
水、20mlを加え、計40mlのカルピス水

ができます。

 

2種類を比べると、

Aは、量は多いが甘さは少ない
量 > 甘さ


Bは、量が少ないけど、甘さは多い
量 < 甘さ

となります。

 

トマトの果実の、大きさと甘さの関係も、このカルピスのケースによく似ます。

 

 そのため、甘いトマトの果実は、その分小さくなります。

 

花が咲いた時には甘さの素の量が決まっています

 

上のカルピスの説明を読んで、

「それなら、元々の原液カルピスの量を増やせば甘くなる!」

と考える方は多いはずです。

 

しかし、トマトの場合、

  • 果実が実る前の段階(花が咲く時期)で、将来に最大で、どの程度まで糖度が上がるのか(糖度の素→カルピスの原液にあたるもの)が、すでに決まっています。
  • そして、果実が生育する段階(実ってから熟すまでの期間)では、その糖度の素の最大値を増やす事ができません。

 

そのため、甘いトマトを収穫するには、

 

 果実が成長する期間に根からの水分吸収を少なくして、果実へ移動する水の量を減らす必要があります。

 

言い方を変えると、トマトの果実の糖度がどのように上がるのかを考える際は、

甘さを増やすというよりは、甘さ濃縮させてを濃くするというほうが、イメージしやすいかもしれません。

 

では、「どのようにすれば糖度の素自体の量を増やせるのか?」という事を知りたくなりますよね?

 

そちらの解説や、より詳細なトマトの糖度の上がるメカニズムに関しては、こちらの記事も参考にしてください。

関連記事

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トマトの糖度が上がるメカニズム【もしもカルピスだったら】

 

甘いトマトにするための3つ育て方

甘いトマトにするための3つ育て方

 

前の章では、トマトが甘くなるメカニズムについて解説しました。

この章では、そのメカニズムを再現するには、どのような方法があって、どのように行うのかについて詳しく解説します。

 

今回紹介する方法は、3種類です。

 

 初心者へオススメの方法は、2番目に紹介している塩を灌水する水に加える方法です。

 

それぞれの方法で特徴がありますが、

共通する原理は、果実への水分の供給を少なくするために行うという事です。

 

トマトを甘くする育て方は、露地栽培では雨の影響を受け、灌水量をコントロールできません。

そのため、ハウスや、簡易ハウスの雨よけ栽培の環境が適します。

露地の環境しか準備できない時はプランターなど培地量に制限をかける事で対応しましょう

 

それでは、それぞれの方法を詳しく解説します。

 

方法その①:水しぼり栽培

 

 水分ストレスを利用した高糖度トマトの栽培方法です。

 

・甘いトマトを栽培する方法としては、通常のトマト栽培に最も近いもので、灌水量を減らす事で、果実への水分の供給を少なくするという、甘くなるメカニズムをシンプルに行う方法です。

・簡単に行えますが、安定した効果を出すには、きめ細かい管理が必要となります。

 

 特徴

  • 特別に準備する資材が必要ない
  • 栽培管理や施肥は通常通り行い、灌水の量やタイミングにより糖度を上げる
  • 灌水量を、天候や土壌の条件に合わせて、細かな調整が必要(晴天の時は灌水し、雨天曇天時は極少量灌水もしくは灌水しない、など)
  • 灌水量を少なくしたほうが、糖度は上がるが、その分枯死するリスクも増える
  • 畑への定植よりも、プランターなど培地の量に制限をかけたほうが、灌水頻度は高くなるが、水分のコントロールが行いやすく、糖度を上げやすい(地下水位の高い条件だと難しい)
  • 水分ストレスをかける時の灌水量の目安は、通常栽培の二分の一程度とし、1日のうち午後3時以降は株全体がやや萎れる程度を目安とする

 

  適切な灌水の感覚がわからない時は、土壌水分計の利用がオススメです。

土壌水分計(PFメーター)

 

数字で水分の様子を把握できるため、灌水が必要かどうかの判断がしやすくなります。

 

方法その②:塩水栽培

 

 塩類ストレスを使用した高糖度トマトの栽培方法です。

 

・液肥灌水する際に、塩を加え通常の倍以上の肥料濃度に設定する事で、浸透圧が働き根からの水分吸収が少なくする方法です。

・毎回の灌水量を細かく調整する必要がなく、多めの量で行っても糖度のが上がるため、枯死のリスクが少なく安定して効果を出す事ができます。
 そのため、初心者向けの高糖度栽培です。

・畑へ定植する際に行うと、栽培後に土が痛む(塩分が残り、次作の栽培が難しくなる)ため、プランター等を使用し、使用後の培地は使い捨てとして行うことを推奨します。

 

 特徴

  • 灌水、肥料の管理は、養液栽培のように、灌水時は全て肥料を含めて行う方法を基本とする
  • 一度塩水灌水を開始した後は、全ての灌水に塩を加えて行う
  • 灌水に利用する塩分濃度は0.2〜0.3%程度とし、通常の肥料分を含めてEC5.0を目安に行う(超高糖度トマトを目指す場合は、塩の投入量を増やしEC値8.0程度で行う)
  • 安定して糖度が上がりすいが、栽培後期からの苗の生育低下がおこりやすく、長期の収穫には向かない
  • 塩ストレスをかけ始めるタイミングや、塩の濃度を変える事で、糖度のコントロールを行いやすい。

 

 液肥と塩を加えた養液のECの数値で結果が大きく変わりますので

 ECメーターで肥料濃度を把握しながら管理する事をオススメします。

 

アタゴ デジタルECメーター DEC-2

 

塩水の灌水を利用したトマトの栽培方法はこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

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オススメ!トマト栽培で塩水灌水【簡単糖度アップの方法】

 

 塩水栽培は、灌水に利用する養液に塩を加える必要があるため、水耕栽培で一般的な2液タイプよりも、1種類で利用できる肥料が使いやすいです

 

塩水栽培に使用する追肥用肥料は、こちらがオススメです。

OKFシリーズ OKF-1 10kg

 

本格的に栽培する方向けになりますが、単肥配合での液肥(培養液)作りについては、こちらの記事を参考にしてください、

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方法その③:ナス台木接ぎ木栽培

 

 トマトをナスの台木に接ぎ木して、高糖度化する栽培方法です。

・トマト栽培では、土壌病害の対策や、長期の栽培を行う際などで接ぎ木の技術が利用されます。
(穂木用の品種が一般的なため、通常は区別していませんが、トマトには穂木用の品種と台木用の品種がある)

・トマトの通常の接ぎ木栽培は、トマトの穂木にトマトの台木を利用しますが、高糖度栽培の方法のひとつに、トマトの穂木と、ナスの台木を利用する方法があります。・ナスの台木はトマトの穂木、台木品種に比べ、根からの給水量が少なく、結果、トマトの果実への水分の吸収が少なくなり糖度が上がります。

・ナスの生産産地である高知県で、研究が多くされており、一部のトマト生産者でこの技術が使われています。

 特徴

  • 接ぎ木作業に手間がかかる
  • トマト+ナスの接ぎ木作業は、トマト+トマトよりも難易度が高く、知識、経験が必要となる
  • トマト+ナスの接ぎ木苗の生産は、一般的でないため、業者から購入する事も難しい
  • 水しぼり栽培や、塩水栽培のように栽培の途中から甘くする管理に切り替える事ができない(播種する時から計画が必要)
  • 糖度が上がる以外に、土壌病害にも強くなる
  • ナス台木の水分吸収の特徴を利用するため、灌水や、肥料をあたえる方法に特別な事をする必要はなく、土耕栽培の方法をそのまま利用できる
  • ナス台木は肥料を吸う力はトマトより強いので、肥料の管理は全体で20〜30%減らすほうが、栽培が安定する

 

接ぎ木の方法などについては、こちらの記事を参考にしてください(トマト穂木+トマト台木での解説となります。)

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トマトの接ぎ木に挑戦【家庭でできる方法を紹介】

 

いつからストレスをかけ始めるのか?

 

上で紹介した方法のうち、特に、

  • 方法その①:水しぼり栽培
  • 方法その②:塩水栽培

では、どの時期から処理を行うのかが重要となります。

 

ストレス開始の時期によって、収穫できる果実の糖度に大きく影響します。

ストレス処理を開始する時期の基準は3段目の花が咲いた時とします。

 

よくある失敗例として、

 

苗を植えた直後から、必要以上のストレスを与えてしまう事があります。

 

特に家庭菜園での栽培など、トマト栽培の経験が少ない人に多いようです。

 

トマトの糖度が上がるには、ストレスを与える必要がありますが、

 

そのストレスに耐えるには、十分な体力(トマトの栽培では苗が健全に生育している事)が必要です。

 

苗の定植直後より、過度に灌水を控えたり、肥料の量が少ないと、ストレスに耐えるだけために必要な体力がつきません。

 

十分な体力がない状態で、灌水量を少なくしたり、塩で肥料濃度があがったりと、本格的にストレスをかけ始めると、果実の糖度が上がる前に、トマトの生育自体に支障が出てしまいます。

 

外見の様子としては、

  • 茎が極端に細く、葉も小さい
  • 葉の色が黄色くなる
  • 花が咲いても、果実が実らず落下する
  • 果実が実っても小さいまま

という状態になってしまいます。

 

 人間で例えると、

 

苗を定植する時期(1段目開花期)が幼稚園児とすると、ストレスをかけ始める3段目開花期は高校生です。

 

高校生になると、きついスポーツの練習にも耐える事ができますが、

幼く体がしっかりできていない時に、過度の強さでスポーツの練習をすると、練習に耐えれません。

 

ハードな練習に耐えるには、十分な体力と、しっかりした体が必要ですよね。

 

トマトの生育も同じで、

体が十分にできていない時に、過度の水分ストレスを受けると、それに耐えられないし、その後いくらしっかり十分な灌水管理をしても、良い状態には戻ってくれません。

 

甘いトマト栽培の副作用

甘いトマト栽培の副作用

 

甘いトマトを育てる際に、デメリットになる事には、果実が小さくなって収穫量が減る事だけではありません。

 

この章では、高糖度トマトの栽培時に発生しやすい障害や、その対策について解説します。

 

収量低下は品種選びも対策となる

 

 これまで説明したとおり、糖度が上がるほどそれに反比例して果実は小さくなります。

 

糖度は上げたいけど、ある程度の収穫量も確保したい場合は、

ストレスの強さ(灌水の減らす量や、塩の濃度など)を調整する方法もありますが、栽培する品種で対応する方法もあります。

 

では、どのような条件で品種を選ぶと良いか?

 

それは、果実の肥大が良い(大きくなりやすい)品種です。

 

品種の特性として果実が大きい特徴を持つものであれば、糖度が上がった際でも、その特徴が発揮されて大きさを維持しやすいです。

 

甘い大玉トマトの栽培で良く利用されている代表的な品種は、

桃太郎ヨーク」です。

 

果実の肥大力高さに加え、夏から冬までどの季節でも栽培しやすい事もよく選ばれる理由となっています。

 

桃太郎ヨークの品種特性等について、はこちらを参考にしてください。

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生理障害の対策(尻腐れ果と裂果)

 

甘いトマトの育て方を行うと、特に、

  • 尻腐れ果
  • 裂果

の発生が起こりやすくなります。

 

尻腐れ果

 

 特に、大玉トマトの高糖度栽培の際に発生しやすくなります。

 

尻腐れ果の直接の発生原因は、果実内でカルシウムが不足する事です。

 

カルシウムは水分と一緒に、トマトの果実の中を移動する性質を持つため、甘いトマトの育て方を行った際は、果実への水分の供給が少なくなり、発生しやすくなります。

 

もちろん、尻腐れ果は収穫量を減らす原因となるため、発生はなるべく減らしたいですが、

ある程度の発生はしっかり高糖度化されている証でもあります。

 

目標の糖度にもよりますが、全体の1〜2割程度までなら範囲内としても良いと思います(全く発生がないと糖度がしっかり上がっていない事も考えられますので)。

 

尻腐れ果の対策

 

高糖度栽培の場合、土壌中に十分なカルシウムがあっても、根から水分を吸う量が少ないため

糖度を高めようとするとどうしても不足してします

 

対策をする場合は、根からのカルシウム追肥の対策は効きにくいため、葉面散布での対策を行います。

葉面散布用カルシウム剤

 

尻腐れ果実については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください

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裂果

 

 高糖度トマトの栽培の中で、裂果が発生しやすいのは、

 

急に灌水量を増やしたり、塩分の濃度を下げた時です。

 

糖度の高いトマトは、果実の中の水分の比重が高い状態となります。

灌水を控えたり、塩を含む灌水を継続している中で、急に濃度の低い水分で灌水すると、トマトの株の中で、浸透圧の作用により果実の中に水分が入りやすくなり、裂果の発生が多くなります。

 

そのため、一度ストレスを与え始めたら、最後まで継続する事が対策となります。

雨よけ施設のない露地で、高糖度栽培を行った際には特に、裂果が発生しやすくなります。

 

裂果については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください

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甘くなるけど、その分酸っぱくなる

 

トマトの果実が甘くなるメカニズムは、糖分含め果実内の養分を濃縮させる事と言えます。

この作用により糖度は高くなりますが、それと同時に酸度(すっぱさ)も高くなります。

 

糖度と酸度が良いバランスで上がる場合は、甘くて、味の濃いトマトになりますが、

栽培する時期や、品種によっては、極端に酸度が目立つ味となることもあります。

 

酸度が極端に高くなり、食味に大きく影響を与える場合は、ホルモン処理で着果処理する事が対策になります。

 

ホルモン処理で着果させると、ゼリー部の生成が弱くなり、酸度を抑える事ができます。

 

トマトトーンスプレー

 

ホルモン処理については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください

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甘いトマトかどうかの確認方法

甘いトマトかどうかの確認方法

 

最後に、トマトの糖度確認の重要性、測定方法、高糖度トマトの合格糖度の目安について解説します。

 

収穫した果実を食べると、ある程度の糖度の感じはわかると思いますが、数字として、しっかり糖度が上がっているか確認する事は非常に重要です

 

なぜなら、

 

 自分が行った栽培管理で、高糖度のトマトを作る事ができたのかを知る事ができるからです。

 

糖度は測定し、はっきりとした数字を基準を作る事で、過去の自分が行った栽培や、一般的な栽培と比較する事ができます。

 

糖度が何度あれば、高糖度トマトとして合格となるか?

 

「フルーツトマト」や、「高糖度トマト」のブランド名で販売されているトマトが多くありますが、

糖度何度以上で高糖度トマトに分類されるかという基準は、その商品の販売元によるものです。

 

これはあくまでも私の基準ですが、どの程度の糖度であれば高糖度として十分なのかを紹介します。

超高糖度:9度以上

高糖度: 7度以上9度未満

超高糖度:10度以上

高糖度:8度以上10度未満

 

以上のように、大玉トマトはもともとの糖度が低いため、中玉品種に比べて低い糖度でも、高い高糖度性をもっていると言えます。

 

フルーツトマトについては、こちらの記事も参考にしてください

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収穫後の糖度測定で結果の確認

 

糖度の測定には、専用の糖度計を利用します。

 

現場でよく使用されるのは、デジタルの糖度計と、屈折型の糖度計です。

 

以前は、デジタルの糖度計は高価だっため、スティック型の屈折計の糖度計が主流でしたが、最近は安価で、性能が良く、持ち運びの良いものがありますので、そちらの利用がオススメです。

 

アタゴ ポケット糖度計 PAL-1

 

一部では非破壊(果実を切らずに)で糖度を測る機械もあり、JAの選果場や大規模に高糖度栽培とおこなっている生産現場で利用されています。

 

  トマトの糖度の測り方

 

トマトの糖度を測る時は、果汁をサンプルとします。

 

トマトの果実を地球に見立てた場合、赤道部でカットして、切り口をとがらせるように力を入れて果汁を、糖度計の測定場所へ落とします。

 

 1回の測定で1滴あれば十分です。

 

結果の数字を見る前に、そのトマトを食べて、何度くらいかなーと予想してみると、糖度予想の良い練習になると思います。

何度か繰り返すと、糖度計なしでもある程度は、予測できるようになります。

 

収穫前の糖度判定は重要

 

糖度計を使う糖度の測定は収穫後に行われますが、果実が収穫される前の栽培の途中で、果実の糖度がわかると役立ちますよね。

 

さすがに、詳しい数字を測定する事はできませんが、

高糖度のトマトに向かって生育しているかどうか判断する事はできます。

 

そのために、収穫前の果実の肩部の色を確認します。

 

 この果実の肩部の色を、「ショルダーグリーン」と読んでいます。

 

糖度の目安の確認以外も、適正な量で肥料を施しているかの判断にも利用される事があります。

 

ショルダーグリーンが濃ければ濃いほど、高糖度の仕上がりに向かっています。

 

トマトの果実の色と糖度の関係の図

 

開花何日後にこの程度の濃さなので、この先の管理でもう少しストレスを高めようなどの基準にします。

 

果実を切らないで糖度を測定する方法

 

果実を切る前に、正確な数字までいかなくても、大体の糖度がわかるだけでも、重宝する場面がありますよね。

 

アタリとハズレのブレをなくして、どれを食べても甘いトマトで揃えたい時です。

 

 例えば、

  • 自分のトマトを新規商談のサンプルとして使う時
  • 直売の時など、試食用のトマトとして確実の美味しい果実を選別したい時
  • 自分の高糖度トマトを大事な人にプレゼントして、絶対に美味しいトマトを食べてもらいたい時

などです。

 

非破壊の糖度測定に、非常に高価な機材が必要になり、家庭菜園でのトマト栽培や、個人の農家さんの場合、その機材を利用する事は、現実的ではありません。

 

そこでオススメなのが、

 塩水を使った、トマト果実の選別方法です。

 

この方法であれば、果実を切る事なく、ある程度の基準で選別する事ができます。

 

3〜5%になるよう塩水を作り、その中に収穫したトマトを入れて、沈まないかで選別します。
塩水を使った、トマト果実の選別方法です
塩水に入れて、沈んだ果実は、

・ミニ、中玉品種で、糖度10度

・大玉品種で、糖度8度

程度を目安に分ける事ができます。

 

 この方法は果実の比重を利用するもので、糖度の高い果実は比重が高くなります。

 

高糖度栽培で育てた果実の場合、通常の水では、ほとんどが沈み、選別できないので、塩を入れて任意の倍率で選別に使用する水の比重を高めます。

 

ちなみに、高糖度栽培でなければ、大玉品種の場合、塩をいれない水でもある程度糖度を分ける事ができます。

 

中玉、ミニトマトはもともと比重が高いので、通常の栽培でも塩の投入が必要です。

 

実際に行う時は、栽培の条件や、品種によって選別の程度が変わりますので、規定の塩水に沈むもの、沈まないものそれぞれ何個かをサンプルとして、糖度を図って基準にしてください。

 

塩水に入れたあとは、真水で流し、必要に応じて拭き取って利用してください

 


 

これまで、甘いトマトの育て方について解説しました。

 

自分で栽培しているトマトの収穫が難しい場合や、プロの生産者が育てたトマトを食べててみたい時は、野菜の宅配サービスの利用もオススメです。
らでぃっしゅぼーや(定期宅配コース)

 

以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。

 

とまと家・中島がお届けしました。

 

Happy Tomating!!

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