収穫が遅れて、熟し過ぎて割れるのであれば納得出来るのですが、果実が完全に赤くなっていないミニトマトの果実も割れる状況です。
収穫が始まった頃は、こんなにミニトマトの果実が割れる事は無かったのですが、困っています。
ネットで調べると、雨が多く降ったり土壌の水分が多く成りすぎると、ミニトマトの果実がよく割れると書いてありました。
家庭菜園で露地の栽培なので、ハウス等で雨を防ぐ事はできません。
何か良い対策があれば教えてください。
このような疑問を、お持ちの方へ向けて、この記事を書きました。
この記事を書いている僕は、17年間トマト栽培を行っております。
国内の種苗会社や、農業生産法人で北海道を中心に海外も含め、トマト栽培やトマトの研究を行い、現在は札幌市でトマト農家をしています。
このブログでは、自分の栽培経験を生かし、生産者の方や家庭菜園の方の疑問、質問に答える形でトマトの育て方等と紹介しています。
僕も過去のミニトマト栽培では、果実が割れるこの症状に悩まされました。
その時に試した方法とその結果や、いろいろ対策を試してみて、効果のあった方法もこの記事で紹介します。
ミニトマトの果実が割れるのは、「裂果(れっか)」と呼ばれる症状です。
ミニトマト、中玉トマト、大玉トマトで発生する生理障害です。
特に、ミニトマトでは発生しやすく、プロの生産農家さんの中でも、果実が割れる事へはとても注意を払って栽培管理がされます。
ミニトマトが割れる主な原因は、
- 多量の灌水や、まとまった降雨により「根」からの大量の水が吸われる事
- 夜間の最低気温が下がり、果実の皮が硬くなり伸び縮みしにくくなる事
- 夏場の強い日光に長時間あたる事で、果実の皮がダメージを受けて細かい傷がきっかけとなって割れる事
です。
この記事では、ミニトマトが割れる原因の深掘りと、それに対する効果的な対策を中心に解説します。
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ミニトマトが割れる時は、品種を変えるのが最良の対策
いきなりですが、
ミニトマトの裂果の対策で最も効果が高い対策は、
裂果に強い品種を栽培する事です。
そして、この対策の効果が高いものだと知ってもらう事が、今回の記事で一番伝えたい事でもあります。
裂果に強い品種を選ぶ効果
裂果に強い品種を選んで栽培する事で、高い効果が出る理由は、
絶対的な対策になるからです。
誰が、どのような環境で栽培しても、果実が割れる事に強いという品種特性の程度は変わりません。
栽培技術がプロの生産者でも、初心者の家庭菜園の愛好者でも、品種が発揮する裂果への強さに変わりはなく、確実に効果を得ることができます。
裂果に強い品種選びのコツ
割れる症状に強い品種選びのコツは、
プロの生産者が利用している品種と同じものを選ぶ事です。
特にミニトマトの場合、品種を開発(品種改良)している、種苗メーカーは、どのような特徴を品種に持たせる事を大事にしているかというと、
それは、
割れるトマトの少なさです。
なぜかというと,
ミニトマトの農家さんが、割れる事の少ない品種を求めているからです。
そして、多くの農家さんに利用されている、ミニトマトの品種は割れる事に強い品種です。
ミニトマトの品種は、国内の品種だけでも100品種に近い種類があります。
カタログなどをみても、どの品種も「裂果に強い」特徴を持っているを記載されており、比較するのが大変ですよね。
このような時は、多くのプロの生産者が栽培をしている品種を選びましょう、実績に裏付けされた高い効果を期待できます。
プロ農家さんが利用している品種とは?
多くのプロの農家さんが選ぶミニトマトの品種は、「キャロル」シリーズです。
現在でも、ミニトマトの主要な産地の栽培では、「キャロル」シリーズの品種が利用されており、プロの農家さんも認める品種力であることが分かります。
2019年11月の時点で、10種類にキャロルシリーズが発表されていますが、
「キャロル10(キャロルテン)」
が、現在日本で最も多く栽培されている品種とされています。
キャロル10は、割れる果実が少なく、収量が出て、食味が良い品種です。
高いシェアを得る事のできる品種は、裂果しにくい事はもちろん、収穫量、食味の面でも高い品種力を持ちます。
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家庭菜園のミニトマト栽培に向く割れる果実の少ない品種は?
これまで説明したとおり、
という事が言えます。
しかし、
多くのプロの農家さんは、苗ではなく、種子を購入し、種まきから苗を育て、栽培を行うため、苗の状態での流通が少ないのです。
家庭菜園でトマト栽培を行う際は、苗を購入する方法が一般的となります。
トマトの苗の管理は、保温や加温ができる施設が必要となるからです。
ホームセンターなどで、さきほど紹介した「キャロル10」の苗を見つけるのは、難しいのが現実です。
このような時にオススメなのは、同じキャロルシリーズの
「ミニキャロル」です。
収穫量の多さと、病気への強さでは、やや劣りますが、家庭菜園での栽培では、気にならない範囲だと思います。
「ミニキャロル」は、苗での流通が多く、ホームセンターなどでも、家庭菜園シーズンになると、取り扱いが多い品種ですので、比較的容易に購入できる品種です。
家庭菜園で、ミニトマトの栽培を始めたいと思います。苗を購入するのに、近くのホームセンターに行くと、「ミニキャロル」という品種が販売されていました。他にも、数種類ミニトマトの種類がありましたが、「ミニキャロル」の品揃えが良[…]
ミニトマトが割れる時の栽培管理の対策法
前の章では、ミニトマトが割れる時の、対策として一番オススメの方法についてを説明しました。
しかし、
そして、
じゃあ、もうすでに栽培していて、今、裂果の対策をしたい時はどうするの??
という事になります。
今すぐに対策したい方は、栽培管理の方法で対策を行う必要があります。
裂果に強い品種選びと共に、栽培管理による対策と行うとより安定的に、割れる果実の発生を少なくできます。
ミニキャロルや、キャロル10の品種を栽培している方も、これから紹介する方法を試してください。
この章では、栽培管理による4つの対策を解説します。
対策その①:過剰な灌水管理を避ける
割れる果実の発生には、灌水管理の方法が大きく関係して、
特に、
多すぎる量の灌水を行った時に割れやすくなります。
トマトの果実の生長は、
- 1(前期):果実を大きくなる時期
- 2(後期):着色が開始し熟する時期
の2つに分けられます。
この図は、1(前期):果実を大きくなる時期のイメージです。
果実が大きくなる時期では、果実に根から吸い上げた水分が流れても、大きくなるのに利用されるため、
この時期に果実が割れる事は、ほとんどありません。
続いて、2(後期):着色が開始し熟する時期のイメージです。
大きくなる時期が終わり、次の熟する時期に入ると、
果実の大きさは変わらずに、熟すための生育になります(緑の果実から赤く着色する)。
この時期に、果実の中に水が入ると、それ以上大きくなれないため、
果実は割れやすい状態となります。
プロの生産者さんが、ハウスや温室の中で栽培する事は、雨による裂果の発生を防ぐ事も大きな理由となっています。
そのため、露地の栽培で裂果を、少なく抑えたい場合は、
このように土壌中の水分をコントロールできない環境では、品種の割れにくい特徴が特に発揮されます。
マルチングの方法等、より詳しい内容はこちらの記事を参考にしてください。
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対策その②:低温期は夜間の最低気温を上げて管理する
夜間の最低気温を上げて管理する事は、裂果を防ぐために有効です。
栽培期間が低温の時期となり、12℃を下回る気温の中での生育期間が長くなると、ミニトマトの果実の皮が硬くなり、裂果の発生を増やしてしまいます。
水風船で例えると
寒い中だとゴムが硬くなり伸縮が悪くなります。
そのため、温かくてゴムの伸縮がスムーズに行う時に、割れなかった水の量でも割れるようになってしまうのです。
実際の栽培現場でも、管理する最低気温を高くすると、割れる果実の発生は少なくなりますが、
ハウス内の温度を上げるには、加温機などの利用が必要となり、温度を上げるに応じてコスト(主に石油などの燃料代)がかかるため、
どのように調整するかは生産者さんの方針や、市場のミニトマトの価格を判断材料として決められます。
対策その③:高温期の晴天時は遮光を行う
ミニトマトの割れる果実を減らすには、日中の遮光管理を行う管理が有効になります。
特に7〜8月の季節は、太陽光の強さが強く、この光にトマトの果実が直接当たる時間が長くなると、皮が痛み、その傷をきっかけに割れやすくなってしまします。
今回は人間の皮膚で例えましょう。
夏の時期に野外で長時間の作業などすると、日焼けします。
日焼けの程度が強いと皮膚がボロボロになり、皮がむけてしまう事があります。
ミニトマトでも、同様の事が起きており、夏の強い直射日光に長時間あたると、果実の皮への傷ができてしまいます。
春秋冬の時期では、太陽の角度は高くないため、問題になりませんが、夏の時期は強い太陽光の直射日光に注意が必要です。
特に、家庭菜園などの栽培で、苗の植え付け後の灌水、追肥が不足して、葉に十分なボリュームがないときは、
葉の日陰(リーフカバー)がなく、強い直射日光が果実へあたりやすくなるため、
草勢管理も割れる果実の発生を防ぐのに大切な管理となります。
プロのミニトマトの農家さんも、夏場の裂果には積極的に対応している場合が多く、
日中の特に太陽の光が強い時間帯(主に10:00〜14:00頃)に、遮光ネットをハウスへかけて対策しています。
対策その④:裂果予防に効果のある肥料を利用する
果実の割れ防止に効果のある肥料の利用が効果的です。
オススメの肥料
この肥料は、裂果に強いミニトマト「キャロル」シリーズの開発メーカー「サカタのタネ」より販売されています。
商品の特徴
甜菜(てんさい:砂糖の原料の植物)から抽出された、アミノ酸含まれており、裂果の防止に効果を発揮します。
土壌灌水か、葉面散布を行い、この成分がトマトの株に吸収される事によって、株内の水分の移動がバランス良くなり裂果の予防につながります。
使用方法
土壌灌水か、葉面散布で利用できますが、どちらの場合も希釈倍率は1,000倍とします。
アルカリ性が強い資材のため、他の肥料や農薬との混用は避けた方が良いです。
土壌灌水と葉面散布の使いわけは?
定期的に灌水を行っている場合は、灌水に使用する水に含めてで使用します。
露地の栽培で、雨が続いて土壌に十分水分があるときは、葉面散布の方法をとります。
使用頻度は、どちらの場合も2週間おきが良いです。
葉面散布の方法については、こちらの記事を参考にしてください。
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他の裂果に効果のある肥料
丸紅株式会社が扱う液肥です。
こちらのほうが、サカタ液肥GBよりも、前に販売されてた商品となります。
僕もミニトマトの裂果に悩まされていたのですが、この肥料の事を知り、使用してみたところ、
トマトの裂果への効果が確認されたので、秋の時期のミニトマトの栽培で利用していました。
「サカタ液肥GB」の販売が開始されてからは、同じくグリシンベタインを含む肥料で、効果も安定しており、
価格も安いため、その後の裂果対策の資材は「サカタ液肥GB」に切り替えて使用しています。
グリーンステムは農協等の資材では、扱いがありますが、ネット通販では注文しにくい事もあり、現在は「サカタ液肥GB」がオススメです。
ミニトマトがたくさん割れる時に気をつける事
これまで紹介した対策を参考に、ミニトマトの裂果の減少に役立ててもらいたいですが、
条件や時期によっては完全に防ぐ事は難しく、どうしても果実が割れる事があります。
自家用で栽培している場合は、果実が割れてしまっても美味しく食べる事ができます。
ここでは、果実がたくさん割れてしまった時の、トマトの活用の仕方とその際の注意点について解説します。
割れた果実はすぐに収穫する必要があり
果実が割れてしまったら、なるべく早く収穫して利用しましょう。
果実が割れても長時間、株に実らせていると、裂果した所にハエが卵を産み付けてしまいます。
特に、夏場では虫の活動も活発なので、注意が必要です。
トマトが裂果してしまうと、商品価値がなくなり、収穫などの作業が後回しになりがちです。
割れたからの時間がたつほどに、ハエの産卵場所の使われるリスクが増えてしまいます。
たくさん割れた果実がでたら冷凍保存がオススメ
裂果した果実は、冷凍保存がオススメです。
果実が割れても、食味は変わらず美味しく食べる事ができますので、これを無駄にしてしまうのは、もったいないですよね。
果実が一度割れてしまうと、早く収穫しないと、ハエの被害のリスクが高まりますので、
まずは、収穫して、とにかく冷凍の方法が無駄をなくすのには良いと思います。
あと、冷凍にするときなヘタをとってからのほうが、解凍後に使いやすいです。
らでぃっしゅぼーや(定期宅配コース)
以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。
とまと家・中島がお届けしました。
Happy Tomating!!