桃太郎トマトの特徴と育て方について質問する人
トマトの品種の桃太郎シリーズって、色々な種類がありますよね。
カタログを見ていると、20種類以上はあると思います。
その中に、「桃太郎」と品種がありますけど、これが、最初に開発されたものですか?
今でも、ホームセンターで販売されている苗で「桃太郎」の品種をよく見かけます。
何だか、「最近開発された新しい品種の方が、良いのかなー?」と考えがちですが、販売開始から年数の経っている元祖・桃太郎でも問題なく栽培出来ますか?
トマトの品種「桃太郎」について教えてください。
このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。
この記事を書いている僕は、17年間トマト栽培を行っております。
国内の種苗会社や、農業生産法人で北海道を中心に海外も含め、トマト栽培やトマトの研究を行い、現在は札幌市でトマト農家をしています。
このブログでは、自分の栽培経験を生かし、生産者の方や家庭菜園の方の疑問、質問に答える形でトマトの育て方等と紹介しています。
桃太郎トマトは、農家の方や、家庭菜園でトマトを栽培する方は、もちろん、消費者の方にもよく知られているトマトの品種です。
現在では、最初に販売された、元祖・桃太郎大玉をベースに改良されたシリーズも20種を超え、多くの産地や、様々な時期のトマト栽培に利用されています。
元祖・桃太郎が販売された当時は、その頃にはなかった、全く新しいタイプの良食味性が、ヒットし、一気に多くの産地が桃太郎トマトの栽培への切り替えが始まり、シェアの高い品種となりました。
現在は、元祖・桃太郎をベースに、栽培性、収量性、耐病性などを改良したシリーズ品種が開発され、新しい品種の利用が多くなっています。
一方で、
家庭菜園や、一部産地では食味の良さで差別化するために、元祖・桃太郎が利用されています。
今回は、多くのシリーズがある中、まだまだ現役の「元祖・桃太郎」の特徴や、育て方のコツについて解説します。
菜園アドバイザーが教えてくれる【シェア畑】
元祖・桃太郎トマトの品種特徴
桃太郎シリーズのトマトは、今では、日本のトマトを代表する品種です。
全国のトマト産地での主力品種となる、桃太郎シリーズの先駆けの元祖・桃太郎には、どのような特徴があるのか深掘りして、解説します。
「桃太郎」はタキイ種苗から販売されている大玉トマトの品種
「桃太郎」はタキイ種苗が1985年に販売を開始した大玉トマトの品種です。
現在は、多くのシリーズ品種が開発され、30種に近いほどのラインナップがありますが、この「桃太郎」がその先駆けとなる、夏秋栽培用の品種です。
桃太郎シリーズのラインナップの一部
「桃太郎」が全国のトマト産地の主力品種になった理由
完熟収穫が可能となる果実の堅さ
桃太郎トマトは、果実の果肉の部分が多い特徴を持ちます。
ゼリー部に対して、果肉が多いと果実が堅くなるため、収穫後の輸送や、店頭に並んでからの店持ちが良くなります。
桃太郎トマトが販売されるまでの、良食味の大玉トマトの主力品種は、ファースト系のものでした。
果実の先がとがるのが特徴の品種です。その他にも、米寿トマトなどが主力の品種として栽培されていましたが、果実がやわらかく、収穫後の調整作業や、輸送を考えると、完熟前の状態で収穫する事が必要となり、完熟まで待たずに収穫する事が必要でした。
また、果肉部分が多い特徴は、果実をカットしてもゼリーが、こぼれずらい特徴にもつながり、料理や加工に使いやすいトマトとしても役立ちました。
元祖桃太郎の食味の良さ
桃太郎トマトは、高糖度でトマト味の強い食味の特徴を持ちます。
2019年の現在では、元祖・桃太郎の販売から30年以上経ち、食味の良さを特徴に開発された桃太郎シリーズの品種もありますが、一部の産地では、元祖・桃太郎の食味を越す品種は他にないという考えで、栽培を続けています。
桃太郎はうまく栽培できれば儲かる品種だった
元祖・桃太郎は、当時の市場にはない、食味の良さを持つ品種であったため、多くのバイヤー等により引き合いの強いトマトとなり、高単価で出荷する事が可能でした。
反面、吸肥力が強く、草勢管理のしにくい栽培面の特徴があり、技術の少ない生産者には、作りこなすことが難しく、安定した量の流通が難しい状況でありました。
この、栽培は難しいけど、うまく作りこなせれば収益につながる状況が、生産者の栽培意欲にもつながり、桃太郎トマトの栽培が増え、さらに、各産地でこの品種の栽培法が確立され、その後の流通量の安定につながりました。
現在でも家庭菜園用品種として多く利用されている
販売開始から30年以上たつ、現在でも、トマトの家庭菜園品種として多く利用されています。
ぶっちゃけその理由は、他の品種に比べて種子代が安く、苗をホームセンター等に納品する、苗の業者さんの利益を出しやすい事もあると思いますが、食味の良さの特徴と、トマトといえば「桃太郎」のブランド力の点と、草勢の強い特徴で少々、灌水、追肥の管理が少なくてもスタミナを保ちやすい特徴も相まって人気の品種となっています。
元祖・桃太郎トマトの育て方のコツ
桃太郎の食味の良さを作る要素は、根の特徴とも言われています。
桃太郎の根は、細く、地面の浅い所に多くある特徴があるため、灌水や追肥の効果が出やすく、その事が食味を良くする事につながる反面、逆に草勢が強くなりすぎて生育のバランスを崩す事にもつながります。
桃太郎を栽培するときは、この根の特徴を良く理解して、生育のバランスをとる事が上手に栽培するコツとなります。
畑準備の際に基肥の量を減らす
基肥の量の設定は、それぞれの栽培環境によって、適正な量が変わります。
例えば、前作までの栽培状況(前の栽培での肥料が土に残っているかどうか)や、堆肥の利用があるかどうかなど。
すでに、トマトを栽培する時の基準の基肥の量がある場合は、その基準より2割前後少なくするのが良いです。
もし、これからトマト栽培の基肥の量を決める場合は、
若苗での定植を避け、開花苗での定植を徹底する
開花苗の定植は、その後の生育が強くなりすぎる事を防ぐために、簡単に行える方法です。
苗が開花(2〜4花開花時)するまで、待ってからの定植とし、若苗での定植は避けます。
低段の花は確実に着果させる
低段の花房(1,2段)の花を、確実に着果させて、茎葉にある程度の負担をかける事は、葉と果実のバランスをとる上で非常に大事です。
何もしないでほったらかしにしておいても、着果することもありますが、特に夜間の温度15℃を下回る時期は、花粉の動きが悪くなるため、トマトトーンを使って確実に着果するように管理する事が大事です。
尻腐れ果の発生に気をつける
トマトの整理障害の中には、果実のお尻の部分が黒く腐ってしまう、「尻腐れ果」があります。
直接的には、果実へのカルシウムの不足が原因で起こる障害ですが、栽培現場で起こるほとんどに理由は、葉が大きくなりすぎて、カルシウムが果実に運ばれる前に、葉で使われるというパターンです。
草勢が強く、葉が大きくなりやすい元祖・桃太郎は、この尻腐れ果の発生がしやすい品種です。
葉と果実のバランスのとれた、生育がされていれば大丈夫ですが、発生が多い場合は、追肥の量の調整や、カルシウム剤の葉面散布などで対応を行います。
尻腐れ果についてはこちらの記事も参考にしてください。
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異常主茎(メガネ)の発生に気をつける
草勢の強いトマトは、異常主茎(通称メガネ)の発生も多くなります。
基肥の量、定植後の灌水や追肥の量が多すぎる事や、曇天、雨天が続いた時に発生が多くなります。
発生の程度が強い場合は、芯止まり(主枝の生長点が伸びなくなること)が起きてしまうので、発生の初期症状(葉と葉の間が極端に狭くなる)が起きてくると、生長点付近のわき芽をとらずに、主枝の更新の備え、灌水、追肥の管理を控えます。
異常主茎についてはこちらの記事も参考にしてください。
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元祖・桃太郎トマトの苗、種子の購入方法
桃太郎は、家庭菜園用の苗として販売される事が多くシーズンになると購入しやすい品種です。
近くにホームセンターなどがある場合は、実際の苗の様子を確認して、状態の良いものを購入するのがオススメです。
また、ネット通販でも扱いがありますので、そちらを利用するのも場合よっては便利になります。
種子での販売も、まだまだ行っており、最新の品種に比べると同じ種子量でも、安価の購入できるので、種子からの栽培に挑戦するきっかけにするのも良いかもしれません。
苗での購入方法
種子での購入方法
これまで、桃太郎トマトの品種特性について、解説しました。
自分で栽培しているトマトの収穫が難しい場合や、プロの生産者が育てたトマトを食べてみたい時は、野菜の宅配サービスの利用もオススメです。
以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。
とまと家・中島がお届けしました。
Happy Tomating!!