トマトの水耕栽培で安定生産【初めて始める人向けに解説】

質問する人

トマトの水耕栽培を始めてみたいなと思っています。

トマトの土耕栽培の経験はあるのですが、すぐに水耕栽培に切り替えても失敗しないでしょうか?

土耕栽培と比べて、どのくらい収量や品質を上げる事に効果的なのか?最低限必要な水耕栽培の資材やその費用なども知りたいです。

このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。

 

この記事を書いている僕は、17年間トマト栽培を行っております。

 

国内の種苗会社や、農業生産法人で北海道を中心に海外も含め、トマト栽培やトマトの研究を行い、現在は札幌市でトマト農家をしています。

 

このブログでは、自分の栽培経験を生かし、生産者の方や家庭菜園の方の疑問、質問に答える形でトマトの育て方等と紹介しています。

 


 

最近は、トマトの生産を新規で始める場合でも、栽培方法に養液栽培(水耕栽培)を選択するケースが多くなってきているように感じています。

 

特に法人として生産を行うなど、

 規模の大きい栽培では、その傾向が顕著です。

 

その理由は、

 

養液栽培(水耕栽培)でのトマト栽培、生産は、土耕栽培に比べると安定しやすい事が大きい理由といえます。

 

設備、資材などの初期投資は、土耕栽培に比べると大きくなる場合が多いですが、

 

 安定した収量、品質につながる事は魅力的です。

 

養液栽培(水耕栽培)の方法の中には、培養土や、土耕栽培で使用する土を利用するものもあります。

 

そのため、土耕栽培の感覚に近い方法で栽培できるものもあり、自分の栽培環境、予算、栽培の経験によって方法を調整できる事も可能です。

 

今回は、トマトの養液栽培(水耕栽培)について解説します。

 

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トマトの水耕栽培の特徴

トマトの水耕栽培の特徴

 

今回の記事のタイトルは「水耕栽培」を使用していますが、トマトの栽培の場合、「水耕栽培」よりも「養液栽培」のほうが多く利用されます。

 

そして、この先の記事の内容で解説する内容は「養液栽培」にあたるものがほとんどです。

 

場合によっては、養液栽培と、水耕栽培を同じグループで扱う事もあり、水耕栽培のほうが多くの人に知られている方法のため、今回のようなタイトルとしています。

 

水耕栽培と養液栽培の違い

 

水耕栽培は、トマトに限らず他の野菜の場合もふくめ、最近ではよく名前を聞く栽培方法の一つです。

 

水耕栽培の比較としてよく利用されるものに、土耕栽培があります。

 

このように、水耕栽培と、土耕栽培が野菜の栽培方法の大きな分類と思われますが、栽培現場等では、

養液栽培土耕栽培

を大きな分類として扱う事が多いです。

 

これは、

養液栽培の方法のひとつとして、水耕栽培が含まれて扱われるからです。

 

例えば、

養液栽培の中で培地を利用しない方法を水耕栽培とする

などです。

 

ウィキペディアでは水耕栽培の説明を以下のように行っております。

水耕栽培(すいこうさいばい、hydroponics)とは、養液栽培のうち固形培地を必要としないもののことをいう。

https://ja.wikipedia.org/ ウィキペディア

 

今回の記事では、水耕栽培と養液栽培を区別して説明する場合と、水耕栽培=養液栽培として説明している箇所が混在します。

 

水耕栽培と土耕栽培の違い

 

・土耕栽培

  • 培地は土壌の土となる
  • 畑の土壌の条件にもよるが、根の広がる範囲の制限が非常に少ない(無限ではないけどほぼ無限)
  • 元肥や追肥に堆肥や粒状肥料が使われる
  • 微量要素を積極的に施肥として施す事が少ない

 

・水耕栽培(養液栽培

  • 培地は使わず水が培地がわりになる場合がある
  • ロックウール、ヤシガラ、土壌など使用される培地を選択できる
  • 培地が元肥を含む事はなく、養液の管理で肥培管理を行う
  • 使用する養液に微量要素を含ませ施す

*土耕栽培の中にも、養液土耕という元肥を使用せずに、本圃に定植直後から養液で灌水管理を行う方法もありますが、今回はそちらを含めず説明しています。

 

水耕栽培のメリット、デメリット

 

前章で解説したそれぞれの特徴から、以下のようなメリットデメリットが挙げられます。

 

 メリット

  • 根域となる条件が土壌の環境に左右されない
  • 養液による灌水を高頻度で行うため、生育のコントロールを行いやすい
  • 培地を利用する場合、制限があるため高糖度化など品質のコントロールが行いやすい

 

 デメリット

  • 資材のコストがかかる(設備のイニシャルコストと毎作の栽培資材)
  • 灌水機材の不備等で枯死するリスクがある
  • 有機肥料のみの栽培が難しい

 

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トマトの水耕栽培の種類

トマトの水耕栽培の種類

 

トマトの水耕栽培を行う際に、どのような種類の方法を利用するかによって、利用する機材や栽培管理も大きく変わります。

 

様式の種類:培地使う、使わない

 

水耕栽培の種類を大きく分類すると、まず

  • その①:培地を利用しない方法
  • その②:培地を利用する方法

に分けられます。

 

培地を利用しない方法

 

トマトの水耕栽培の場合、培地を利用しない方法はほとんど利用されていません。

レタスや雑菜類の葉菜類、小ねぎなどで水耕栽培を行う場合によく利用される方法です。

 

培地を利用しない方法には大きく2種類あります。

 

 

 

1:DFT型(Deep Flow Technique)

  • 栽培ベッド内に一定の培養液を蓄え、循環させる湛液(たんえき)水耕
  • NFT型の方式が導入される前の、培地を使わないメインの方法として利用されていた

 

2:NFT型(Nutrient Film Technique)

  • 傾斜のある栽培ベッドに上流から下流へ培養液を流して循環させる薄膜(はくまく)水耕
  • 根のほとんどが空気に触れているため、DFT型で問題となりやすい根への酸素供給が安定する特徴がある。

 

レタスの水耕栽培など、最近の培地を使わない方法では、ほとんどの場合でこちらを利用しています。

 

培地の違い(ロックウール、ヤシガラ、礫耕、土など)

 

培地を利用する方法は、土耕栽培の感覚に近いため取り組みやすく、栽培が長期に渡り根量が多いトマトや、果菜類でも多く利用されています。

 

トマトの水耕栽培では、ほとんどが培地を利用する方法で行われています。

 

培地を利用する方法は、培地の種類によって特徴が変わってきます。

 

 よく利用される培地はロックウールとヤシガラ培地です。

 

ロックウール培地

  • 玄武岩を材料に高温で溶かしたものを、線維化させた培地
  • 園芸用以外の場面では、住宅などの保温材としての利用がおなじみ(チクチクするやつ)
  • ロックウール培地は、培地自体への養液からの吸着が少ないため、栽培者が灌水で利用した養液が、前回までの養液管理の影響をほとんど受ける事なく利用でき、水耕栽培の要となる養液管理をコントロールしやすい
  • 養液の灌水後の、培地内の液相、個層、気層のバランスが優れ、根の伸長に良い環境となる
  • オランダのメーカーの資材が有名だが、国内メーカーによっても生産、販売がされている

 

ヤシガラ培地

  • 培地に利用されるヤシガラは、ヤシの実を加工した後に、廃棄物として出る繊維を集めて利用される。
  • ロックウールと比較すると、培地が酸性で通気性が良い事が特徴となる。
  • ロックウール培地に比べると、培地内を少ない水分含量でコントロールしやすいため、高糖度の果実を生産する栽培で利用される事が多い。
  • 資材の価格は、ロックウールと同程度だが、ヤシガラ培地の方が高い傾向です。
  • 原料となるヤシガラは、スリランカ、東南アジアなど海外から輸入されるものがほとんで、塩素、ナトリウムなどの塩類を多く含んでいる場合があるので、使用前に確認し、必要であれば十分に除塩してから利用する。

 

今回は、2種類のみ紹介しましたが、水耕栽培の培地として利用できる資材は多くあり、土耕栽培で利用される畑の土、ホームセンター等で販売されている培養土、ピートモス、くん炭などでも対応できます。

 

トマトの水耕栽培の栽培管理

 

トマトの水耕栽培と土耕栽培の管理方法を比べると、一部では水耕栽培ならではの方法をとる必要がありますが、

 

ほとんどの栽培管理方法は同じ内容で行う事ができます。

 

今回は、トマトの水耕栽培で最も多く利用されているロックウール培地を利用する方法で紹介します。

 

水耕栽培と土耕栽培で方法が変わる栽培管理と、ポイントは以下のようになります。

 

定植本圃の準備

 

ロックウール培地の大きさは、長さ約1m、高さ7.5cm、幅20cm程度です。

 

これらを、土耕の場合の畝を作る方向と同じ向きで、並べていきます。

 

吊り下げタイプのハンモック式の台や、地面に設置する架台などがあり、専用のものは廃液も回収できる造りになっているものが多いです。

 

作業位置が低くなり作業性が落ち、廃液の回収も難しいですが、地面へのべた置きもできるので、小規模の栽培や、試験的にロックウール栽培を行う場合はこの方法でも対応できます。

 

育苗

 

ロックウール栽培のトマト苗の育苗は、ロックウール培地へ定植する事を前提に苗を育てる必要があります。

 

そのために、一般的には育苗用ロックウール培地(キューブ)を利用して苗を管理します。

 

肥料を含む育苗用の培土を利用する土耕用のポット育苗では、育苗中に追肥を行う事は多くないですが、ロックウールでの育苗は灌水が必要な時は、肥料を含んだ培養液で行います。

 

ロックウール栽培の育苗方法については、こちらの記事を参考にしてください。

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*一般的に土耕栽培で行うポリポットで苗を生産した場合も、ロックウール培地へ定植する事は可能ですが、定植作業にとても手間がかかります。
方法としては、
ポリポットの底部を切り取り、根鉢に底部が、ロックウール培地としっかり接触するように設置します。

定植

 

定植作業は、ロックウール培地の設置さえ完了した状態になれば、土耕栽培よりも短時間でできます。

 

基本的に、苗のロックウールキューブを、培地のロックウールへ置いて(必要であれば固定も)いくだけで完了です。

 

灌水、肥培管理

 

灌水、肥培管理が土耕栽培と大きく異る点となり、以下の内容が特徴となります。

 

  • 灌水は基本的に肥料を含んだ培養液で行う
  • 培地に元肥がふくまれていないため、定植直後から培養液での灌水を行う
  • トマトの生育状態、ステージ、栽培時期により灌水量、頻度、養液の肥料設計を調整する
  • 灌水に利用する資材は、通常ロックウール用のものを利用し、土耕栽培用の灌水資材の利用は難しい(不可ではない)

 

ロックウール栽培の灌水方法については、こちらの記事も参考にしてください。

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ロックウール栽培時の養液の作り方については、こちらの記事も参考にしてください。

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誘引管理

 

ロックウール栽培の誘引管理は、ハンモック式に培地を設置した場合は、専用の誘引方法をとる事になりますが、それ以外は好みの誘引方法で栽培をする事が可能です。

 

ただし、ロックウール栽培では土耕栽培に比べて、長期に渡って栽培する事が多いため、そのような特徴に合わせて、吊り下げ誘引を利用する事が多いです。

 

誘引方法に関しては、特に栽培期間や、栽培に利用する施設の条件に合わせて方法を検討してください。

 

誘引の方法に関してはこちらの記事も参考にしてください。

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トマトの水耕栽培の収量と果実品質

 

トマト栽培の方法を選ぶ時に、水耕栽培を選ぶ場合の理由として最も多いものは、収量を上げるためではないでしょうか?

 

専用の資材の用意が必要な水耕栽培は、初期投資の金額も大きくなりますが、

 

長い目で見ると安定した収量、高い品質の青果物の生産につながるため、主要な栽培方法とされています。

 

水耕栽培では収量が上がりやすくなる

 

トマトの水耕栽培で収量の上げやすい方法は、

1.ロックウール栽培

2.ヤシガラ培地栽培

の順となると思います。

 

土耕栽培の方が、根域が広く良い生育、多収量になりそうに思いますが、

 ロックウール栽培の方が収量の上がる事が多いです。

 

ロックウール栽培で、大きく関係しているのは、培地の物理性(気相、個相、液相のバランス)、化学性(培地への肥料吸着が少ない)と考えられます。

 

もちろん、ロックウール培地の利点を活かすための、栽培管理(特に培養液の灌水管理)を行って始めて、良い収量の結果につながります。

 

上記のような、物理的な培地や養液管理の特徴以外にも、安定して収量を上げるための特徴があります。

  • 栽培技術の再現が容易
  • 毎作新規の状態で栽培を行う事ができる
  • 栽培する土地の条件に左右されない

 

土耕栽培の場合、栽培するもともとの土地条件によって、土壌の条件が大きくかわります。

 

そして、良い土作りには年単位の多くの時間がかかります。

 

さらに、もともとの土壌条件もそうですが、前作の栽培の残肥や土壌病害の発生状況などで、次作に影響する場合があります。

 

これに対し、ロックウール栽培は、新品の培地を利用するかぎり、

 

いつだれが利用しても同じ条件で栽培を始める事ができます。

 

畑(土壌)を準備しなくても、地面が全てコンクリートで覆われた状態でも、100%ロックウールの特徴を発揮する栽培が可能です。
このように、栽培技術さえあれば、土地の条件に左右されずに栽培できる事も収量を安定して上げる事につながります。

水耕栽培では品質(糖度)が上がりやすくなる

 

培地を利用して水耕栽培を行うと糖度を上げやすい栽培条件となります。

 

これは、培地の大きさに制限があるためです。

 

トマトの水分の吸収が灌水管理からのみとなり、必要以上の水分は培地外へ排出されます。

一度の灌水で植物が利用できる水分の量は限られ、必要以上に根から吸収されることが少ないのです。
(土耕栽培の場合は、灌水を行わなくても土壌中の水分を吸収するため意図しない分の水分を利用している)

 

さらに、培地の種類によっても糖度の上がりやすいさに差がでます。

 

排水性が良い特徴を持つ培地で、糖度を上げる栽培に有利になります。

 

特に、ヤシガラ培地は糖度を上げるために水耕栽培の方法としてよく利用されます。

培地の大きさに制限があるため、トマトの水分の吸収が灌水管理からのみとなる(土耕栽培の場合は、灌水を行わなくても土壌中の水分を吸収するため意図しない分の水分を利用している)

 

トマトの水耕栽培に必要な資材と予算

 

これまでの解説で、トマトの水耕栽培には多くのメリットがあると解説してきました。

 

ロックウールやヤシガラ培地を利用する方法の場合、土耕栽培の経験も活かせるため、試しに水耕栽培を始めたいと考える方もいるかもしれません。

 

そこで、気になるのはやっぱりお金の事です。

 

この章では、最低限の資材でロックウール栽培を始めるには、どのような資材が必要で、どの程度の予算が必要になるかを紹介したいと思います。

 

紹介している金額等は、ネットで購入できる商品を調べたもので、あくまでも参考ですので、目安として活用してください。

 

また、すでにお持ちの資材等は調整して参考にしてください。

 

必要な資材と予算(ロックウール栽培の場合)

 

試算の条件

  • 2,500株/10a
  • 株間40cm
  • 播種〜移植まではセルトレイ+育苗培土で管理

 

ロックウール培地

資材名規格単価(円)必要数量価格(円)
ロックウール培地(*1)定植培地用(スラブ)1,008500個504,000
ロックウール培地(*2)苗育苗用(キューブ)612,500個153,385

*1:2作の利用も可能
*2:1作1回のみ利用可

 

灌水資材-1

資材名規格単価(円)必要数量価格(円)
アロードリッパー352,500個87,500
ウッドペッカードリッパー8.5L/H130625個81,250
マニフォールド4枝34625個21,875
PEパイプ16mm(100m)9500500m47,500
マイクロチューブ3×5mm(100m)4,4001,500m66,000

 

灌水資材-2

資材名規格単価(円)必要数量価格(円)
灌水モーターポンプ最大吐出量:120L/min45,2361個45,236
液肥混入機ドサトロン93,5002個187,000
原液肥料タンク丸型200L22,3732個44,746

 

肥料代の予算

 

試算の条件

  • 定植後の栽培期間5ヶ月として
  • EC2.6程度の培養液を1.0L/株・日とした場合(2,500株×1L×150日=375,000L)

 

資材名規格単価(円)必要数量価格(円)
大塚ハウス1号、 2号 セット培養液1,600L分2,100235493,500

 


 

これまで、トマトの水耕栽培について、解説してきました。

 

自分で栽培しているトマトの収穫が難しい場合や、プロの生産者が育てたトマトを食べててみたい時は、野菜の宅配サービスの利用もオススメです。
らでぃっしゅぼーや(定期宅配コース)

 

以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。

 

とまと家・中島がお届けしました。

 

Happy Tomating!!

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