トマト栽培で大活躍トマトトーンの使い方【これだけは守りたい使用方法6ヵ条】

質問する人
トマトの果実の付きを良くするために、「トマトトーンを使うと良いよ」と、知り合いのトマト農家さんから勧められました。

ホームセンター等で、よく商品を見かけますが、どのように使うものなのかイメージがわきません。

使い方や効果について教えてほしいです。

このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。

 

この記事を書いている僕は、17年間トマト栽培を行っております。

 

国内の種苗会社や、農業生産法人で北海道を中心に海外も含め、トマト栽培やトマトの研究を行い、現在は札幌市でトマト農家をしています。

 

このブログでは、自分の栽培経験を生かし、生産者の方や家庭菜園の方の疑問、質問に答える形でトマトの育て方等と紹介しています。

 


トマトは、寒い時期、暑い時期ともに、開花後の着果がしにくくなります。

 

これは、

トマトの花粉の働きが悪くなるためです。

(寒い時期に花粉の働きが悪くなるのは、想像しやすいと思いますが、暑い時期、特に気温35℃を超えるような環境でも、暑すぎて働きが悪くなります)

 

トマトトーンを利用する事によって、このような時期でも、

 

トマト果実の実り(着果)が安定し、収量の増加につながります。

 

トマトトーンの成分が花粉に似た性質を持つためで、実際の花粉の働きが悪い場合でも、着果を促す事ができます。

 

トマトトーンの使用方法で重要になるポイントは6つあります。

  • ①希釈倍率
  • ②処理のタイミング
  • ③雌花の先に処理する
  • ④噴霧の量
  • ⑤茎葉にかけない
  • ⑥2度がけしない

このように、利用する際の方法によって、期待できる効果も大きく変わります。

 

トマトトーンは、プロのトマト農家さんにもよく利用され、収穫量を上げるために重要なものです。

 

農家さんの栽培だけでなく、家庭菜園でトマトを栽培する方にも、とても役立つ資材になりますので、ぜひ、活用してみてください。

 

今回は、自分が使用してきて得た経験に基づき、トマトトーンの特徴、使用方法を深堀りしながら解説します。

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トマトの栽培で使うトマトトーンってどんなもの

トマトの栽培で使うトマトトーンってどんなもの

 

トマトトーンという言葉を聞いた事のあるけど、使用の経験は少ない方は、多いのではないでしょうか?

 

この項では、トマトトーンの基本的な利用目的、使用時の効果等について解説します。

 

トマトトーンは植物成長調整剤に分類される薬剤です

 

 「トマトトーン」とは、商品名です。

 

4-CPAという成分を持ち、

トマトの着果促進の目的に利用されます。

 

トマトの他にも、ナスなどの着果促進にも効果があります。

 

トマトトーンを使用して、着果促進処理をする作業を「ホルモン処理」と呼ばれ、
別名ホルモン剤とも呼ばれます。

 

トマトの花の花粉は、

最低気温10℃以下

最高気温35℃以上

の条件で働きが悪くなります。

 

トマトの栽培では、時期によって、上記の温度条件で栽培する事があり、着果が不安定になる場面も出ます。

 

その対策として利用し収量向上の役立ちます。

 

 一方で、トマトトーン利用によるデメリットもあります。

  • 空洞果の発生が多くなりやすい
  • 「花かす」が自然に落ちにくくなる
  • 産地、部会のルールによっては農薬利用とカウントされる事もある

 

空洞果の発生が多くなりやすい

 

トマトトーンを利用する着果は疑似受粉となります。

 

疑似受粉の場合、

着果肥大時に種子は形成されますが、花粉による受粉ではないので、発芽する事のできない(しいな)種子になります。

 

また、種子の形成に関係する、果実内のゼリー部の量が少なくなりやすくなります。

 

このため、各子室の肥大が悪くなり、空洞果の発生が、花粉による着果に比べ多くなります。

 

ホルモン処理による、空洞果発生を少なくするための対策として、花房へ散布するトマトトーン希釈液に、ジベレリンを加える方法があります。

 

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空洞果発生についてはこちらの記事も参考にしてください。

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「花かす」が自然に落ちにくくなる

 

トマトトーンの利用によって着果した果実は、

「花かす」(花びらのかす)が自然落ちにくくなります。

 

特に大玉トマトで起こりやすく、病気の発生元になることや、出荷調整時に作業が増える事にもつながります。

 

花カスが果実から落ちない状態が続くと、特に「灰色かび病」の発生のきっかけとなる事が多いです。

 

花カスが落ちにくくなる対策として、花房へ散布するトマトトーン希釈液に、専用の薬剤を加える方法があります。

 

詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

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産地、部会のルールによっては農薬利用とカウントされる事もある

 

トマトトーンは、植物生長調整剤ですが、各産地の部会等のルールによっては、農薬として扱われる場合がありますので、利用の条件を確認も行ってください。

 

トマト栽培で使用するトマトトーンの使い方と花の特性の解説

トマト栽培で使用するトマトトーンの使い方と花の特性の解説

 

トマトトーンの利用の目的を把握したところで、次に、使用方法について解説します。

 

そのためには、まず、トマトの花の特徴を知る必要があります。

 

トマトの花の構造

 

トマトの花粉を普段見る機会は少ないと思います。

 

これは、花が咲いても花粉は筒状になっているおしべの内側(筒の内側)にあるためです。

 

雌しべも筒の中にあり、外に出ず受粉を完了します。

 

そして、雌しべも目立ちません、こちらもおしべの内側にあるからです。

 

トマトの花は、下の方向を向いて開花し、雌しべが伸びる際に、雄しべの筒内側の花粉に柱頭が触れて受粉するか、上から花粉が落ちて柱頭につき受粉します。

 

これが、花粉による、自然界の受粉の方法です。

 

トマトトーンの使い方

 

トマトトーンの使い方で重要となるポイントを、6つに分けて解説します。

  1. 使う時期によって希釈倍率を変える
  2. 適切な開花のタイミングで処理する
  3. 花の筒の柱頭をめがけて散布する
  4. 噴霧の量は、霧吹きで2プッシュ
  5. 花房以外(茎葉)にはかけない
  6. 2度がけはしない

 

その①:使う時期によって希釈倍率を変える

 

使用する時期の最高外気温により、希釈倍率を調整します。

 

目安は以下のとおりです。

 

20℃以上の時→100倍

20℃以下の時→50倍

基本的な考え方は、

低倍率(50倍)の方が、効果が出やすいが、高温時に低倍率で使用すると、空洞果、奇形果発生のリスクが増えます。

 

その②:適切な開花のタイミングで処理

 

トマトの花の100%開花の時期を、目安にして開花前3日、開花後3日の間で効果が出ます。

 

作業省力のために、なるべく少ない作業量で最大の効果のために、以下の目安を参考にしてください。

大玉トマト→1花房1回

2.5花開花時


ミニ、中玉トマト→1花房2〜3回(段数と花数により変える)

5花開花ごとに行う

 

その③:花の筒の柱頭をめがけて散布する

 

大事な事はトマトトーンの薬剤が雌しべの柱頭に付着する事です。

 

トマトトーンが花粉の役目をしますので。 結果的に花びらにも薬剤が付着しますが、目標は柱頭です。

 

その④:噴霧の量は、霧吹きで2プッシュ

 

1花房あたり、
「シュッ、シュッ」と霧吹きで2回噴霧が基本です。 開花している花の状況と噴霧の状況で調整してください。

 

その⑤:花房以外(茎葉)にはかけない

 

特に成長点付近のまだ葉が柔らかい時に、トマトトーンの薬剤の薬剤がかかると、薬害がでてその後の、葉の生育に影響がでる場合があります。

 

霧吹きを持つ反対の手でカバーして行います。

 

その⑥:2度がけはしない

 

「シュッ、シュッ」と2回霧吹きで噴霧する事が2度がけではなく、

例えば、今日噴霧した花に、3日後にまた処理するという事です。

 

1花あたり(1花房でない)1回の利用が、空洞果、奇形果発生が少なくなります。

 

希釈した薬剤に食紅を添加して、処理済みの花に赤色の目印をつける方法があります。

 

ホームメイド 食用色素 赤 5.5g

 

トマトトーンの商品と販売形態

 

トマトトーンは、そのまま「トマトトーン」という商品名で販売されています。

 

すでに希釈されて、購入後そのまますぐに使用できるタイプのものと、原液の状態で販売されており、希望の倍率に希釈して利用するものがあります。

 

どちらも、ホームセンターや、ネット通販で購入する事ができます。

 

【希釈済み】購入後にそのまま使えるトマトトーンスプレー

 

 

【原液タイプ】好みの倍率で使用可能なトマトトーン【30lm】

 

※家庭菜園で使う場合は、30mlタイプの方が、キャップ付きの容器で少量使う場合に便利です。

 

トマト栽培でトマトトーンに頼らない着果促進の方法

トマト栽培でトマトトーンに頼らない着果促進の方法

 

トマトトーンの使用方法とを利用するメリットについて解説しましたが、

 

場合によっては、使用を避けたい場合もあると思います。

 

この項では、トマトトーンを使用しない着果促進の方法について解説します。

*解説する方法は、全て花粉を利用しますので、花粉が働く温度帯の時期での利用をオススメします。

 

マルハナバチの利用

 

 

マルハナバチによる着果促進は、省力の面からも有効な方法ですが、生産者や利用の条件によっては使用できませんので、ご注意ください。

 

詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

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トマトの受粉にマルハナバチを利用する【基本特性と使用方法】

 

開花している花房を振動させる

 

この方法は、アナログで作業の手間がかかりますが、マルハナバチを利用する時のように、花を振動させて着果促進の効果を期待できます。

 

誘引支柱や誘引紐を震わせる

誘引に使用している支柱、紐を振動させて間接的にトマトの花を振動させたり、茎や花を直接振動させる方法でもOKです。

 

着果促進用アプリの利用

iPhone(iOS)用のアプリに、トマトの受粉・着果促進アプリ【SmartBumblebee | スマートバンブルビー】があります。

 

これは、 iPhoneデバイスのバイブレーション機能を利用し、トマト果実の着果(実付き)を助けるアプリです。

  • このアプリは、マルハナバチがトマトの花を振動させ花粉を集める動作の代わりをし、トマトの花の受粉を助けます。
  • 利用日、回数、メモ、花の状態を画像で保存する事もでき、作業履歴の管理、効率化を行えます。

アプリはこちらのAppStoreからダウンロードできます。

アップストアロゴ

こちらのアプリの詳しい利用方法はこちらの記事で紹介しています。

トマトの受粉・着果促進アプリ【SmartBumblebee | スマートバンブルビー】効果を高める使用方法

簡易振動発生機の資材を利用

専用の簡易振動発生機も資材として販売されていますので、チェックしてみてください。

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ブロアー(送風機)の利用

 

こちらも、振動させる事により効果を期待します。

 

振動の強さなどの微調整はできませんが、手で行うよりも大幅に効率がアップしますのでオススメです。

 

ブロアーの選定には、充電バッテリータイプが安くて、性能も十分でオススメです(電動のタイプは、価格が安いのですが有線での作業になるので、使いにくいです)。

 

リョービ(RYOBI) 充電式ブロワ BBL-120 (フルセット) 12V

 


これまで、トマトトーンについて、解説しました。
自分で栽培しているトマトの収穫が難しい場合や、プロの生産者が育てたトマトを食べててみたい時は、野菜の宅配サービスの利用もオススメです。
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以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。

 

とまと家・中島がお届けしました。

 

Happy Tomating!!

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