トマトの受粉にマルハナバチを利用する【基本特性と使用方法】

質問する人
先日、視察研修で熊本のトマト農家さんを訪れました。
ミニトマトを、中心に栽培しているハウスでしたが、印象的だったのは、マルハナバチの利用でした。
ハウス内のトマトを見ている時も、ブンブン飛んでいました。
今まで行ってきたトマトの受粉は、ホルモン処理ばかりでした。
マルハナバチの利用は、受粉管理の省力化に役立つとよく聞くので、取り入れたいなと思っています。
マルハナバチの利用について教えてください。

 

このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。

 

この記事を書いている僕は、北海道を中心に海外含め、17年間トマト栽培を行っております。

 

過去に北海道で、トマト栽培をしていた時に、マルハナバチを利用しました。

その頃は、2002年で、セイヨウオオマルハナバチを利用していました。

 

2019年の9月より、セイヨウオオマルハナバチ使用の許可基準が、変わりました。

詳しい内容は、こちらの記事を参考にしてください。

関連記事

北海道でトマト農家をしています。栽培面積はミニトマトを20a程度です。来年から、受粉管理の省力化のために、マルハナバチを利用したいなと考えています。2006年からセイヨウオオマルハナバチの取り扱いは、厳格化されたのは知っ[…]

セイヨウオオマルハナバチの使用許可の方法が変更されています【2019年9月より】

 

同じ国内でも、地域によって基準が変わるため、2019年以降も、新規就農で、セイヨウオオマルハナバチと、代替種となるクロマルハナバチ、両方の利用が想定されます。

 

今回は、トマト栽培で種類を分けずに、マルハナバチの単位をした利用する際の、基本的な知識や方法について紹介します。

 

 

スポンサードリンク

マルハナバチを利用するトマトの受粉管理

マルハナバチを利用するトマトの受粉管理

マルハナバチの利用は、トマトの栽培にとってどのようなメリットが生まれるのか?

マルハナバチの特性と共に解説します。

 

マルハナバチの種類と特性

マルハナバチはミツバチ科の昆虫です。

ミツバチに比べると、体が大きく、体を覆う毛も長く特徴を持ちます。

飛ぶ音も比較的大きく、近くに寄ってきた際は簡単に気づく事ができます。

 

マルハナバチの巣は、ミツバチのような均一な六角形(ハニカム構造)ではなく、楕円形の巣室で構成される。

マルハナバチは、巣の中に多くの蜜や花粉を貯蔵する事ができない。そのため曇天や少々の雨の天候でも、花粉や蜜を集める必要があり、この特徴が農業の利用の中で効率的に働く。

 

トマトに利用されるマルハナバチは2種類あります

 

セイヨウオオマルハナバチ

上の写真は、セイヨウオオマルハナバチです。

ヨーロッパから中近東にかけて分布している外来種。
黒と黄色の縞々の模様をしており、クロマルハナバチよりも体が大きい
お尻の毛が白色で、この特徴でクロマルハナバチとの見分けが簡単につく

 

クロマルハナバチ

日本(本州以南)、朝鮮半島に分布する在来種。
黒い毛をベースに茶色いお尻が特徴的

 

スポンサードリンク

マルハナバチ利用のメリット

トマトの栽培の中で、マルハナバチを利用するメリットは、いくつかありますが最大の目的は、

着果促進作業の省力化です。

 

マルハナバチを使わず、着果促進管理をする際は、ホルモン処理で対応する方法が一般的です。

この方法は、1花房ごとの手作業が必要で、非常に多くの労力がかかります。

マルハナバチを利用すれば、巣箱の管理等は必要ですが、ハチに任せきりで、効率的に作業ができます。

 

その他にも

・花粉を利用する受粉のため、果実内の種子が形成されゼリー部の充実が良くなり、空洞果の発生が少なくなり、酸味の効いた食味になります。
・トマトトーンを利用するホルモン処理は、農薬の使用にカウントされる事もありますが、マルハナバチは有機農法とされます。

 

 

トマト栽培でのマルハナバチ利用方法

トマト栽培でのマルハナバチ利用方法

利用可能な時期

マルハナバチの活動適温は、15〜30℃の範囲をされていますが、トマトの生育に必要な最低気温8〜10℃程度内でも、飼育管理は可能です。

逆に巣内の温度が、高温になる事には注意が必要で、35℃超えると、巣が溶け出すことや、幼虫の死亡の発生が増えます。

 

ハウス施設へのネット展張

セイヨウマルオオハナバチを利用する場合は、環境省の定める法律に基づき、栽培施設の換気部には4mm以下のネットを張り、出入り口を2重構造にする事が義務づけられています。

 

クロマルハナバチの場合も、対象作物となるトマトに効率的に蜂花させ、ハウス外の天敵による捕食の害を減らすためにも、セイヨウマルハナバチ同様に、ネットの展張管理が必要です。

 

巣箱の管理方法

自然界のマルハナバチは、地面の中の穴に巣を作ることが多いです。これは、直射日光が巣に当たらないようする事で、高温条件をさけるためとされています。

 

トマトの栽培での利用時も、夏期などハウス内、巣内が高温になる条件では、地中に巣を設置し、さらに遮光の管理などを行い、巣内の高温を防ぐ対応を行います。

 

 

砂糖溶液の設置

トマトの花は蜜を出さないため、マルハナバチはトマトの花粉のみを集めます。

蜜は、マルハナバチの活動のエネルギー源の働きとしても、重要なため、このエネルギー源になるものを、人間が準備する必要があります。

 

[水:砂糖]を、[1:1]で混ぜ合わせた、砂糖水を作り、マルハナバチが溺れないように、脱脂綿やクッキングペーパーに染みこませて、ハウス内に設置します。

 

 

殺虫剤の使用

マルハナバチも昆虫のため、トマト栽培中の殺虫剤の利用には注意が必要です。

特に注意が必要なのは、殺虫剤散布後の残効日数です。

散布後に農薬の効果が残っていると、マルハナバチは活動できません。

マルハナバチへの農薬の影響の情報は、農薬メーカーのサイト等で入手する事ができます。

 

栽培期間中は、害虫を対象とした殺虫剤の利用が多くの場合で必要となります。

薬剤散布の作業開始時から、マルハナバチの巣箱を移動する必要がありますが、複数棟の栽培ハウスがある場合は、薬散対象ではないハウスへ、移動し薬剤の残効期間が過ぎるまで待ちます。

待避させる栽培ハウスがない場合は、マルハナバチの出入りが確実にない状態で巣箱を閉め、薬剤の影響がない場所で管理します。このときに付属の餌がある場合は、利用してマルハナバチの体力を維持します。

 

マルハナバチの代替資材

 

これまで解説してきたとおり、着果促進の効率化に役立つ反面、マルハナバチの利用は利用する生産者さんに、いろいろな制約が発生します。

ここでは、マルハナバチを利用せずに、同様の効果を得るための方法を紹介します。

 

手作業での方法となりますので、多面積の栽培には向かず、家庭菜園など小面積での栽培に活用していただければと思います。

 

誘引支柱や誘引紐を震わせる

誘引に使用している支柱、紐を振動させて間接的にトマトの花を振動させたり、茎や花を直接振動させる方法でもOKです。

 

着果促進用アプリの利用

iPhone(iOS)用のアプリに、トマトの受粉・着果促進アプリ【SmartBumblebee | スマートバンブルビー】があります。

 

これは、 iPhoneデバイスのバイブレーション機能を利用し、トマト果実の着果(実付き)を助けるアプリです。

  • このアプリは、マルハナバチがトマトの花を振動させ花粉を集める動作の代わりをし、トマトの花の受粉を助けます。
  • 利用日、回数、メモ、花の状態を画像で保存する事もでき、作業履歴の管理、効率化を行えます。

アプリはこちらのAppStoreからダウンロードできます。

アップストアロゴ

こちらのアプリの詳しい利用方法はこちらの記事で紹介しています。

トマトの受粉・着果促進アプリ【SmartBumblebee | スマートバンブルビー】効果を高める使用方法

 

簡易振動発生機の資材を利用

専用の簡易振動発生機も資材として販売されていますので、チェックしてみてください。

VegiBee Garden Pollinators Battery Powered Plant Pollinator [並行輸入品]

 

ブロアー(送風機)の利用

 

こちらも、振動させる事により効果を期待します。

振動の強さなどの微調整はできませんが、手で行うよりも大幅に効率がアップしますのでオススメです。

 

ブロアーの選定には、充電バッテリータイプが安くて、性能も十分でオススメです(電動のタイプは、価格が安いのですが有線での作業になるので、使いにくいです)。

 

リョービ(RYOBI) 充電式ブロワ BBL-120 (フルセット) 12V

 


以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。

とまと家・中島がお届けしました。

 

>野菜の収穫時期管理サービス

野菜の収穫時期管理サービス

家庭菜園や農家さんに役立つ野菜の収穫時期を知る無料サービス【ハーベストタイマー】をリリースしました。WEBサイト版、iOS版を利用できます。登録したデータは、どちらのバージョンでも共有して利用できます。

CTR IMG