現地のトマト農家や、野菜農家の栽培現場を視察したそうですが、袋に土を入れて栽培する方法が非常に多かったそうです。
写真も見せてもらいましたけど、確かに袋に培地を入れて栽培していました。
日本ではあまり見かけない栽培方法だと思うのですが、なぜ、ベトナムではこのような方法が多いのでしょうか?
このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。
この記事を書いている僕は、北海道を中心に海外含め、17年間トマト栽培を行っております。
実は、過去にベトナムの農業生産法人へ、トマトの栽培技術の指導をしに、5ヶ月ほど滞在した事があります。
そして、そのトマトの栽培方法も、まさに袋栽培でした。
今回は、ベトナムや、東南アジアで多く利用されている袋栽培について、自分の経験も含めてご紹介します。
トマトの袋栽培の特徴【どうして東南アジアで多く利用されるのか?】
ベトナム、マレーシア、シンガポールなどの国では、トマトや、きゅうり、メロンなどの果菜類作物を栽培する際に、袋栽培の方式がとられる事が多いです。
もちろん、畑に苗を植える土耕栽培もありますが、ハウスや温室の中で高品質の物の収穫を狙う場合は、ほとんどが袋栽培です。
このような栽培方法の確立には、どのような背景があるのでしょうか?
もともとの畑の土壌の条件が悪い
よく、日本の土壌の特徴で、黒い土は栄養がたっぷりで野菜の栽培に向くとされています。これは、有機物がたくさん含まれていて、ふかふかで、保水、排水性、肥料持ちが良いです。
黒くて良い土に反対は、赤い土です。
土壌に含まれている有機物が多いほど、土は黒くなる傾向があり、少ないと赤いです。
自分でその場に滞在して、現場の栽培経験があるベトナムの、土壌事情を例に解説します。
畑として利用されている、土壌の条件がとっても良くないです。
農業が盛んな地域を車で走ると、周りの土は真っ赤っかです。
このように、もともとの土壌の条件が悪いと、理想の状態まで土壌改良ためには、長い時間と、費用がかかります。
それなら、別に培地を用意して栽培したほうが、早いし、安いし、良いよねという考えです。
袋栽培時の培地となるヤシガラの入手コストが安い
ベトナムで袋栽培する際に使用する培地は、ほぼヤシガラです。
ヤシガラは、ココヤシの果実であるココナッツの繊維を、ヤシ油や飲料として利用した後に、利用するものです。
繊維の粉砕直後は、赤い色で「アク」が多く、作物の栽培には向きませんが、その後、アク抜きと熟成する事で、作物の培地にてきする資材となります。
日本で利用されるヤシガラの資材は、スリランカ産のものが有名ですが、ベトナムでもココヤシの栽培が盛んで、自国産のヤシガラを利用する事で、安価で袋栽培などの、隔離栽培に向く園芸用培土が利用できます。
袋栽培用の周辺資材が充実している
上記で説明したように、ベトナムは、条件の良くない土壌に、時間とコストをかけることなく、安い資材を利用する条件が整っている地域です。
そのため、袋栽培の技術がすでに確立され、栽培時に必要となる周辺の資材も充実されています。
袋栽培用の灌水資材や、設置用トレイや、廃液用資材などです。
必要な資材を準備しやすい環境も、袋栽培が定着する理由となっています。
プロ農家向け、トマトの袋栽培【資材の準備と栽培管理の要点】
ベトナムや、その他の国で、袋栽培が多く利用されているには、その地域の特徴があるからです。
では、この栽培方法を、日本のトマト農家さんが取り入れる事は、メリットのある事なのでしょうか?
現在の日本のトマト栽培をベースに考えてみましょう。
トマトを袋栽培するメリット
以下のようなメリットが考えられます。
- 培地の水分、養分のコントロールがしやすく高品質トマトを生産しやすい
- 土耕の栽培技術を応用しやすい
- 培土を入れる資材のコストが安い
- 培土を使い捨てる栽培に向く
・培地の水分、養分のコントロールがしやすく高品質トマトを生産しやすい
これは、袋栽培に限らず、培地の量を制限して行う、隔離栽培に共通するメリットですが、袋栽培の場合、使用する培土は自分で選べます。
場合によっては、数種類を自分で混合したものを使う事もできます。
その内容によっては、排水がよく効くバランスにしたりと、自分好みのカスタマイズがしやすいです。
・土耕の栽培技術を応用しやすい
培地に利用する材料は、ヤシガラ、ピートモス、土など、培土と呼ばれるものとなります。
ロックウールの培地となると、土耕の技術を生かすには、少々慣れが必要と思いますが、培土を使用する袋栽培の場合、土耕の栽培技術や経験を生かしやすいです。
・培土を入れる資材のコストが安い
培土を入れる資材=袋の事です。
ちなみにベトナムの現地で使用されているのは、ポリフィルム製の外面が白、内面が黒で、排水用の穴が1袋あたり8個あいています。
袋のサイズによりますが、8〜12L/1袋の培土が入ります。
販売されている値段ですが、1kgあたり350円程度です。
何枚でいくらではなく、重さが単位となります。
そして、いくつか規格があるので、大きい規格は1枚あたりの単価が高くなり、小さいものは安くなります。
大きいタイプ(MAX:12L培土が入る)の規格で、1kgで15枚前後になります。
・培土を使い捨てる栽培に向く
袋に入れて使用する培土を、その栽培1回のみで、栽培後には処分(どこかの畑に土壌改良として投入)するような方針の栽培には、非常に適します。
袋に入れる培土の種類もそうですが、入れる量も栽培者で調整できます。
1度の栽培に必要な最低限の土の量で、栽培して収量後に処分すれば、無駄なく毎作新しい培土の栽培を行う事が可能となります。
このように、培土の使い捨てが特に向く方法は、灌水に塩水を利用する塩類ストレス栽培です。
栽培が終わる頃には、塩類が集積した培土になりますので、再利用には向きません。
袋栽培する際の資材の準備
培土
東南アジアでの栽培は、地域の特徴もありヤシガラの利用がほとんどですが、日本で袋栽培の培土を選ぶのであれば、ピートモス主体の培土がオススメです。
現地では資材コストの低いヤシガラも、日本で使用する場合は、ピートモスよりも割高になる事が多いです。
袋栽培=ヤシガラ培土ということはまったくないです。
ヤシガラの培土は、場合によってはアク抜きが十分ではなく、生育に影響が出ることがありますが、日本で販売されているピートモスは、品質も安定していますし、入手しやすいし、値段も安いです。
袋と、周辺資材(設置架台、排水用資材)
実は、日本では、東南アジアで使用されているタイプの、培土用袋を入手するのは難しいです。
ですので、ポリポットの大きい規格のもの、不織布の材質の袋で対応する方法が応用しやすいのですが、気合いを入れて東南アジア方式をとるのであれば、現地から資材を輸入するか、日本国内の業者にオーダーメイドする必要もでてきます。
袋栽培用の排水資材や、架台も日本では、販売されていません。
ただ、灌水後の廃液を畑に、流しても大丈夫であれば、排水の資材や台は必要ありません。
灌水資材
ロックウール培地の栽培時によく利用される、ドリッパーが使用しやすいです。
といいますか、ドリッパーの一択となります。
ドリップチューブですと、袋の設置の仕方によっては、無駄な量の灌水をしたり、各袋に均一に灌水できないからです。
ある程度の規模(2,000〜2,500/10aくらい)の栽培ですと、ホース灌水なんかは基本無理ですし。
以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。
とまと家・中島がお届けしました。