トマトの栽培を始めた当初より、地域の技術普及員の方のオススメの品種を使用しています。
北海道の道央地域、2月蒔き・無加温半促成の作型で、品種は「CF桃太郎ファイト」です。
3年間同じ品種を使用しています。
最近は、いろいろなメーカーから、数多くの品種が販売されているので、他の品種の栽培にもチャレンジしたいなと思っています。
メーカー発表の品種のカタログなどを見ると、おおまかな品種特性は把握できますが、実際に自分の畑で栽培してから、最終的にどの品種に変えるか決めたいと思います。
何種類かの品種を栽培して、成績の良いものを、この先のメインに変えようと思うのですが、その際にどのように、トマトの調査を行えばよいでしょうか?
調査の方法や、気をつけた方が良いポイントがあれば教えてほしいです。
このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。
この記事を書いている僕は、北海道を中心に海外含め、17年間トマト栽培を行っております。
メインで栽培品種を変えるのって、けっこう勇気が必要ですよね。
過去には、品種比較のための試験栽培も行った経験があります。
栽培し慣れた品種を変えると、品種の生育のくせが変わったり、障害が発生したり、収量が減ったりとするリスクがあります。
ただ、品種を変えることが、収量、品質アップの良い影響になるパターンもあります。
メーカー発表のカタログには、基本良い事しか書かれていないので、自分の畑で、作型で実際に栽培して、特性を把握する事が重要です。
最初は、数十株から始めて、成績の良かった品種をハウス単位の試験栽培にし、そこでも成績が良ければ、全面的に栽培品種を切り替える方法だと確実です。
また、トマトの生育調査、収量調査を行うと、調査の項目を意識的に見るようになり、観察力もアップし、栽培技術の向上にも役立ちます。
今回はトマトの品種比較の際に、どのような内容で調査を行えばよいかを解説します。
トマトの調査を行う際に必要な栽培環境
トマトの調査は、思いつきのまま行っても狙っている結果が得られません。
ある程度の調査の項目や、栽培の条件の設定が必要です。
細かい設置は置いておき、まずは、これだけは整えておきたい調査の条件について解説します。
複数の品種を栽培する
例えば、気になる品種があって、その1品種だけで栽培しても、比較する対象がなくて、非常に調査が行いにくいです。
効果的な調査を行うには最低でも2品種以上を栽培する必要があります。
多すぎても、調査が大変になりますが、5品種程度を対象にしたほうが、特性の差が見やすいです。
現段階でメインとなっている品種は絶対に栽培する
調査の対象は、新たに、栽培のメインにしようと考えている品種になると思いますが、調査を行う時は、今までメインにしていた品種も必ず加えて栽培してください。
品種の調査をする際は、既存の品種と、新規候補の品種の比較が最も大事な内容になります。
調査する品種は、全て同じ栽培環境・作型にする
同じ栽培環境とは、例えば、対象になる品種全てを同じハウスで栽培する事や、ハウス内の元肥は均一に施す事や、マルチや灌水資材を品種によって変えないということです。
同じ作型は、同じ日に種をまき、同じ温度、水分で管理をして、同じ日に苗を定植するという事です。
数品種の育苗だと、1段目の花の開花の時期が、品種によって変わりますが、平均的な開花の状況に合わせて定植の日を決めます。
正確な調査の結果を得るには、栽培環境の均一化が非常に重要になります。
トマトの調査を行う際の必要な調査株数
調べる株数を多くしたほうが、より詳しい調査になります。
しかし、多くするほど調査の作業は大変になります。
特に収穫が始まってからの調査は、通常の収穫・出荷だけでも、とっても忙しいので、いかに必要最低限の調査量にして、かつ良い結果を得られるかが大切です。
調査に必要な1品種の栽培株数
理想は20株、最低10株
栽培するハウスの大きさや、どの程度調査用の栽培に、割当たられるかの条件も関係しますが、
最低10株
が、基準になります。
1品種あたりの栽培株数が多いほど、安定した調査結果が得られます。
トマトの調査を行う際の必要な項目設定
調査の項目の設定をする際は、トマトの生育に関する項目と、収量に関する項目に大きく分けて、さらにそれぞれを細分化するとわかりやすくなります。
生育調査(茎葉特性調査)
1段目花房の着生位置
1段目の花房の位置です。
1段目の収穫の早生性に関係します。
着生位置が低い→早生
着生位置が高い→晩生
一般的に、トマト品種の早生性は、開花後の収穫までの積算温度が基準になります。
この1段目の花房の着生位置は、1段目(栽培の中で最初の収穫)の早晩に関係します。
定植後〜3段目開花時までの草勢
品種の草勢の調査は、生育調査の中で最も重要な項目になります。
ある程度で期間を分けるほうが調査を行いやすく、ここでは、定植〜3段目開花と、それ以降としています。
調査の方法は、
現在栽培のメインとなる、既存の品種を基準として、新たに試験している品種の草勢が、強いか弱いかをみます。
5段階に分けると調査しやすいです。
基準となる既存の品種の草勢を「3」
として、それよりも強い草勢であれば、「4」か「5」、弱ければ「1」か「2」、同じくらいの草勢であれば「3」とします。
3段目開花〜収穫開始までの草勢
3段目の花房が開花した後の時期は、果実の着果負担がかかる時期となり、定植後とは違う生育の特徴をもちます。
この時期の生育が良いものは、比較的栽培管理が容易なものが多いため、調査を行います。
方法は、「定植後〜3段目開花期まで」と同じ内容で行います。
節間長(草丈)
葉と葉の間の長さ(節間)を調査します。
節間が長い品種は、株全体の草丈が高くなります。
節間の長い品種は、誘引の回数が増えたり、高さが決まっているハウス等の栽培では、収穫可能な段位が少なくなる事につながります。
この項目も、既存品種を「3」として、5段階で評価します。
葉の大きさ
葉が大きい品種は、草勢が強い場合が多く、夏期の栽培に向きます。
反対に小さいものは、草勢が弱く、冬場の栽培に向きます。
この項目も、既存品種を「3」として、5段階で評価します。
収量調査(果実特性調査)
果実の熟期
果実の早生性を調査します。
最終的に知りたい情報は開花後〜着色開始までの積算温度です。
そのためには、まず、調査対象の果実(花)をマーキングし、開花日と着色開始日を記録します。
その間の気温の詳細は、気象庁のホームページで調べる事ができるので、1日の平均気温を出し、積算温度を割り出します。
10株あたりの収量
収穫時の果実の重量です。
全ての収穫作業の時に記録します。
10株分の調査を行えば、精度としては十分です。
1品種20株など、11株以上栽培している場合は、生育の揃いが良い10株をピックアップして、収量調査すると良いです。
10株あたりの秀品率
収量を調査する時に、一緒に行います。
一般的な果実の障害の発生状況を調査し、全体の収量から障害発生果を引いて、秀品率を出します。
障害の分類は、チャック・窓あき果、乱形果、裂果、花落ち大あたりです。
10果実あたりの重量
収穫時に、ランダムで10果の果実を選び、10果実あたりの重量を調査します。
10果の総重量を10で割ると、平均の1果重の目安が出ます。
この調査で重要なのは、10果のサンプル選びです。
ランダムで選ぶのですが、収穫したとき全体の、それぞれの果実の大きさのバランスを、10果実の中で再現します。
例えば、100個の果実を収穫したとします。
その時の大きさの内訳は、
L:60個
M:20個
でした。
この状態で、ランダムで果実を選ぶ際に、LLの果実10果を選ぶと、その時の1果平均果実重はもちろんLLの規格になり、正確な調査にはなりません。
ですので、見た感じで良いので、なるべく10個の果実が、LL:2個、L:6個、M:2個の割合に近くなるように、調査用の果実を選びます。
糖度
毎回の収量調査の際に行い、1度の糖度の調査は、1品種2〜3果実が目安になります。
調査に使用する果実のサンプリングは、大きさを決めて行うようにします。
例えば、糖度を測る果実は、全てLの規格にするなどです。
規格を統一する事で、より正確な糖度の比較調査が行えます。
以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。
とまと家・中島がお届けしました。
happy tomating!!