あんなぺらぺらのフィルムを張るだけなのに、何か良い事ってあるんですかね?
でも、みんなやっているから気になります。
マルチングについて教えてほしいです。
このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。
この記事を書いている僕は、北海道を中心に海外含め、17年間トマト栽培を行っております。
最近は、ロックウール培地、袋培地など使う事も多くなってきていますが、土耕栽培を行う時は、ほぼほぼマルチングをしてからトマトの苗を植えます。
その経験をもとに、マルチングの効果や使い方のコツについて解説します。
トマト栽培のマルチング効果
畑を耕してた後は、すぐにトマトの苗を、植えたくなるかもしれませんが、
その前に、マルチングをお忘れなく。
それは、マルチングには、たくさんのメリットがあるからです。
マルチングのメリット・デメリット
「マルチング」はマルチを張る事です。
別の呼び方では、「マルチ張り」などと読んで、作業のひとつをされています。
トマトを植える周囲を、フィルムなどで被覆する事でたくさんのメリットがあります。
まずは、メリットから紹介しましょう。
メリット
- 低温期の栽培で行うと、地温が上がりやすい
- 高温期の栽培で行うと、地温が下がりやすい
- 土壌内の水分が安定する(灌水管理の効果が高くなる)
- 雑草の発生を防ぐ
・低温期の栽培で行うと、地温が上がりやすい・高温期の栽培で行うと、地温が下がりやすい
地温が上がったり、下がったりでいったい、どちらの効果がでるのと思うかもしれませんが、
使用するマルチ資材の種類を変えることで、地温を上げる事にも、下げる事にも役立ちます。
・土壌内の水分が安定する(灌水管理の効果が高くなる)
トマトの苗を植えるための、植穴以外は表面が覆われ、土壌内の水分の蒸発が抑えられます。
この事で、最低限の灌水管理で、目標とする土壌内の水分を維持できます。
間接的な効果ですが、必要以上の灌水管理で地温を下げる事や、灌水管理の省力化にもつながります。
・雑草の発生を防ぐ
マルチの種類にもよりますが、土壌へ、光が当たるのを防ぐため、被覆された場所の雑草の発生が抑えられます。
デメリット
- マルチを張る作業が必要となる(栽培後の片付けも)
- 資材のコストがかかる
- マルチの中に灌水チューブを設置する時は、事前の作業が必要
・マルチを張る作業が必要となる(栽培後の片付けも)
少ない面積ですと、気にならないかもしれませんが、農家で栽培するような300坪以上の面積だと、大仕事になります。最近はマルチングの機材も充実してますが、手作業の場合は、なかなか大変さ作業です。
・資材のコストがかかる
畝の大きさや、使用する規格にもよりますが、やはりある程度のコストはかかってしまいます。
使用後に、自然に分解し、畑にすき込めるタイプなどもあり、片付け作業がなくとっても楽ですが、やはりその分価格はお高めです。
・マルチの中に灌水チューブを設置する時は、事前の作業が必要
ハウスなどを使用し、雨よけで栽培する時は、ほとんどの場合、灌水チューブの設置を行います。
灌水の効果を高めるには、マルチの中にチューブが設置されている必要があります。
苗を植えてすぐに、チューブを使用しなくても、マルチングの作業の時にはチューブの設置が必要となります。(時間はかかりますが、マルチング後にもチューブをマルチ内に設置はできます)
トマト栽培でのマルチング方法
最近では、マルチイング用の農機も充実しており、栽培面積に応じた投資をする事で、効率的に作業を行えます。
面積が少ない場合は、手作業でもしっかりマルチングできます。
今回は、代表的な方法を紹介します。
手作業で張る
畝の際に溝を掘って、マルチの端を埋める
ある程度、体力と時間が必要ですが、マルチがしっかり押さえられて固定されるので、露地での栽培時でも、風によるばたつきなどが少ない方法です。
クワやスコップで溝を切って、埋め戻す方法が一般的です。
マルチ押さえ用の資材(ピン)を使って固定する
マルチや、被覆用の不織布資材用として、押さえるための資材が販売されています。
やや重労働となる、溝切りの作業を行わなくても、マルチを張れます。
ある程度の間隔でピンを設置するため、ハウス内など風の影響を受けにくい場所で使う事がオススメです。
専用機材で張る
機材にマルチの資材をセットして、畝の上をひっぱれば、溝切り、マルチ展張、マルチ押さえまで一連の作業を行える資材です。簡易な資材ですが、省力化に役立ちます。
機械張り(トラクタ、管理機)
トラクタや管理機を利用して、マルチングを行う方法もあります。
高額な農機が必要であり、広い面積の作業を行う時に効果がでるので、プロの農家さん向けの方法になります。
ローターリーをセットになっているものもあり、畑の耕耘作業と一緒にマルチング出来ます。
機械がしっかり張ってくれ、少ない人数で広い面積の作業が可能です。
種類によっては、耕耘、灌水チューブの設置、マルチング、場合によっては施肥も同時に行います。
トマト栽培で使うマルチング資材
マルチ資材には、大きさ、厚さ、色、材質などの違いによって、いろいろな種類があります。
自分の栽培の環境に合わせて、適切な種類を選びましょう。
マルチの材質
一般的なマルチの材質
- ポリエチレン(農ポリ)
- 植物質デンプンなど(生分解系)
- 不織布
- 有機物(稲わら、もみ殻など)
・ポリエチレン(農ポリ)
最も使用されている材質、色、厚さ、大きさなど様々なものがラインナップされています。
種類も多く、価格も安く、丈夫で使いやすいです。
・植物質デンプンなど(生分解系)
見た目はポリエチレンの物にやや似ています。
使用後に自然に分解されるため、展張したままロータリー等で耕耘する事ができ、省力化に非常に役立つちます。
・不織布
通気性があり、高温期に使用すると地温の上昇を防ぎ、土壌水分の安定に役立ちます。種類によっては、水を通すもの、通さないものがあります。
・有機物(稲わら、もみ殻など)
通気性があり、断熱効果もあるため、地温上昇を防ぐのに効果が高いです。
透水性があり、有機物のマルチの上から、灌水チューブの使用も可能です。
栽培終了後は、すき込む事ができるため、有機質投入と省力化に役立ちます。
マルチの規格
マルチの色
主なマルチの色は、下記のとおりで、それぞれに特徴があります。
- 黒
- 白
- 透明
- グリーン
- シルバー
マルチの色による使いわけの基準は、
- 雑草の防止
- 地温のコントロール
となります。
地温に与える影響
地温が上がる順は
・グリーン
・黒
・白
・シルバー
雑草防止
効果が高い順は、
・シルバー
・グリーン
・透明
となります。
マルチの色の特徴をまとめると、
・光を通さないほど、地温は上がらず、雑草防止の効果が高い
です。
地温を下げる効果が高いのは、
シルバーの方が、白よりも太陽の光を反射するため、土壌内の地温は上がりにくくなります。
作型によっては、低温期と高温期の両方を経過します。
低温期→高温期のパターンと、高温期→低温期のパターンがあります。
両方の期間に対応するために、マルチを2枚重ねて展張し、効果を変えたい時期に上のマルチだけ取り除く方法もあります。
例えば、低温期→高温期のパターンだと、
上:黒いマルチ
下:白いマルチ
を重ねて展張するといった具合です。
マルチの幅
- 95cm
- 135cm
- 150cm
- 180cm
がマルチの一般的な幅です。
マルチの端を埋めるのに、最低10cmずつは確保して、畝の幅と高さに合わせて、マルチの幅を選びます。
マルチの厚さ
0.02mm
0.03mm
が一般的な厚さです。
厚いほうが、丈夫で展張しやすいのでオススメです。
以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。
とまと家・中島がお届けしました。