野菜・他人・自分に優しい薬剤散布【作業の時間帯で効果が変わる】

質問する人

栽培している野菜に病気や虫が発生しています。

日が経つごとに、被害が大きくなってきているので、薬剤散布をして対応したいです。

でも、薬剤散布の作業って、農薬を使用するので体に悪そうなイメージを持っています。
しっかり野菜の病気、害虫の対策をして、自分の体のケアもして作業したいです。

どのような事に気をつける必要がありますか?

教えてください。

 

このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。

 

この記事を書いている僕は、17年間トマト栽培を行っております。

 

国内の種苗会社や、農業生産法人で北海道を中心に海外も含め、トマト栽培やトマトの研究を行い、現在は札幌市でトマト農家をしています。

 

このブログでは、自分の栽培経験を生かし、生産者の方や家庭菜園の方の疑問、質問に答える形でトマトの育て方等と紹介しています。

 


 

薬剤散布の最大の目的は、

 

野菜に発生している病気や、害虫の害を抑える事です。

 

そのため、どのように散布の作業を行い、効果を最大限にするかという点に目がいきがちです。

 

もちろんそのように考えるは、当然ですが、

 

野菜への効果以外にも、大切にする事があと2つあります。

 

薬剤散布する人の健康と、散布する野菜の周囲(近くの人や、近くの野菜)への配慮です。

 

散布に使用する農薬には、種類によって劇薬、毒薬に分類されるものあり、使用時は人への健康被害に気をつけなければなりません。

 

今回の記事では、野菜への効果を最大限にする作業の方法と、作業を行う人、周囲の環境にも意識した、薬剤散布の方法について解説します。

 

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薬剤散布のこころがまえ

薬剤散布のこころがまえ

 

すでに、解説したとおり、

 

薬剤散布は、野菜の効果だけに注意すれば良い作業ではありません。

 

作物、他人、自分に注意を払う必要あり

 

薬酸の作業を行う時に注意すべきものは、大きく3つあります。

  • ①対象の野菜
  • ②自分
  • ③周囲

です。

 

①対象の野菜

 

薬剤散布で病害虫を防除したい散布対象の野菜です。

 

散布する薬剤が、最大の効果を発揮できるように注意します

 

②自分

 

作業をする自分や、作業する人です。

 

  • 農薬を扱うため、マスク、手袋など防護具の使用を徹底
  • 体調が優れない時の作業を控える
  • 高温下での作業は行わない

など、を行い体調管理に注意します。

 

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③周囲

 

  • 散布作業をする際に圃場(散布場所)の近くにいる人
  • 自近くで栽培されている作物

です。

 

作業中は

  • 薬液が周囲の人にかからないようにする事
  • 散布中の薬液が周囲の野菜にかからない(ドリフト防止)ようにする事

に注意が必要です。

 

薬剤散布時の使用薬剤の選定と、実施スケジュール

薬剤散布時の使用薬剤の選定と実施スケジュール

 

薬剤散布の作業を始める前に、

 

まず、

使用する薬剤の選定が必要です。

 

農薬のボトルのラベルには、

適用病害および使用方法

が、必ず記載されており、

 

販売メーカーのホームページの解説からも確認する事ができます。

 

適用病害および使用方法

 

ここでは、アミスター20(殺菌剤)を例に、

適用病害および使用方法に記載例を紹介します。

 

作物名適用
病害虫
希釈
倍数
使用
方法
使用
時期
本剤の
使用
回数
散布
液量
アゾキシ
ストロビン
を含む農薬
の使用回数
トマト灰色
かび病
2000倍散布収穫
前日
まで
4回
以内
100~
300L
/10a
4回
以内

かび病
2000倍散布収穫
前日
まで
4回
以内
100~
300L
/10a
4回
以内

 

農薬種類と対象作物

 

薬剤には適用のある野菜の種類が決められています。

 

そして、

薬剤の種類によって、効果のある病害、害虫の種類が変わります。

 

農薬の商品には、必ず記載されていますし、各メーカーからも情報が公開されています。

 

まず、薬剤の適用、対象の病害虫を確認し、目的にあう種類を決定します。

 

散布可能か過去の散布履歴を確認(制限回数)

 

農薬の種類は、効果を発揮する成分の違いと含有量によって分けられます。

 

そして、

各成分には、1度の栽培の中で利用できる使用回数が決まっています。

 

過去に薬剤散布の作業を行っている場合は、

 

その履歴を参考にし、対象の成分の使用回数が条件以内が確認します。

 

 ここで注意が必要なのは、

 

使用回数は、商品に対してではなく、成分に対して決められている事です。

 

商品名は違っても、同じ成分を使用している事が多くありますので、しっかり確認します。

 

基本はローテーション散布

 

説明したとおり、各成分の利用できる回数は決まっています。

 

対象の野菜に対して効果のある成分を持つ種類をいくつか準備して、

 

それぞれを定期的に利用し、制限回数を超えないようにする方法が一般的です。

 

散布後の収穫可能時期

 

各薬剤には、収穫日に対する使用時期が決まっています。

 

トマトの場合、

収穫前日まで

をされている事が多いです。

 

これは、収穫する1日前までに散布をしないといけないという事で、

逆にいうと、

薬剤を散布すると1日経つまで収穫できないという事です。

 

散布作業終了から24時間待つ必要があります。

 

 他の例として、

収穫7日前まで

と記載されている場合、

 

散布作業が終了した後、7日間(7日×24時間→168時間)収穫できません。

 

収穫の予定も含め、散布のスケジュールを決めましょう。

 

使用上の注意を確認する

 

農薬全般としての注意もありますが、

 

その商品で特有の注意事項がある場合もあります。

 

他薬剤の混合不可や、薬害(薬剤散布により葉や茎などにダメージが出ること)への注意点などです。

 

その内容を確認し、自分の環境に当てはまるかをしっかり判断します。

 

薬剤散布作業時の安全対策

薬剤散布作業時の安全対策

 

薬剤散布の作業には、

散布者の健康維持のため防護具の利用が必要です。

 

薬剤散布時に必要な防護具

 

準備が必要な防護具の種類は以下の通りです。

 

  • 帽子
  • ゴーグル
  • マスク
  • 防護服
  • 手袋
  • 長靴

 

帽子

 

お持ちの作業用の帽子でも、利用できますが、

使い捨てのタイプですと、作業後にそのまま捨てる事ができるので便利です。

 

使い捨てヘアキャップ

 

ゴーグル

 

保護ゴーグル

 

防護服

 

カッパ、ヤッケ、不織布製の防護服などが薬剤散布の作業に利用できます。

 

高価になりますが、GORE−TEX素材のものは、防水、透湿のため涼しく作業しやすいです。

 

 

防水・透湿ゴアテックス レインスーツ

 

マスク

 

薬剤散布用の防毒マスクがしっかり防護する事ができます。

防毒マスク 半面形面

 

手袋

 

薬剤散布の作業は、手に薬剤が付着しやすいため、布製ではなくゴム製のものを利用しましょう。

 

裾が長いものが、薬剤付着を防ぎやすくオススメです。

 

腕カバー付き手袋

 

長靴

 

耐油長靴ホワイト

 

 

薬剤散布時の薬液づくり

薬剤散布時の薬液づくり

 

農薬を水に希釈する薬液づくりにも決まりごとがあります。

 

使用する薬剤の解説を確認して準備しましょう。

 

希釈倍数と散布液量の決め方

 

希釈倍率

 

希釈倍率は、農薬の種類によって決められており、その指示に従います。

 

1,000〜2,000倍と幅がある場合もあります。

 

夏期の薬の効果が出やすい時期などは2,000倍など高い倍率で、

 

気温の低い時期や、病害虫の発生の程度が強い時は1,000倍など、低い倍率で行います。

 

 

散布液量

 

散布液量は、薬液(農薬を希釈した水)を、ある面積あたり何リットル散布するかの量です。

 

こちらも農薬の種類により違うため、それぞれの指示に従います。

 

10a(1反)あたり、100〜300Lと決められている事がほとんどで、

 

生育初期など苗が小さい時は、少ない量で、

 

生育途中から株が大きくなってからは、多い量で行います。

 

農薬散布の方法

【プロへの第一歩】トマトの葉面散布に挑戦【基礎知識から実践まで】

 

栽培の現場での実際の作業の方法を、解説します。

 

薬剤散布の作業は、防護具も身につけ大変な作業です。

 

効果的な方法で無駄のない作業を心がけましょう。

 

散布作業の時間帯はとっても重要

 

ここでタイトルの回収になりますが、

 

野菜にも、周囲にも、自分にも良い状態での薬剤散布をするためには、

 

作業の時間帯選びは重要です。

 

では、どの時間帯良いのか?

 

薬剤散布作業は早朝が良いです。

 

なぜ、早朝が作業時間にいいのかというと、

 

涼しいからです。

 

涼しいと多くのメリットを得られます。

 

その理由は以下のとおりです。

  • その①:薬剤が安定して高い効果を出す
  • その②:防護具を身に着けても作業しやすい
  • その③:ドリフトが起きにくく、人の活動も少ない

 

その①:薬剤が安定して高い効果を出す

 

気温が高い時、太陽の光が強い時は、薬剤の効果が安定しません。

 

そして、薬害の発生が多くなります。

 

散布後、葉についた薬液の水分が蒸発して、高濃度の状態で吸収されるからです。

 

 例えば、

1000倍希釈の液を散布しても、

 

葉に吸収される時は400倍や500倍になるイメージです。

 

 気温が涼しいのであれば、夕方もいいのでは?

 

と思う方もいると思います。

 

しかし、夕方の散布はオススメできません。

 

その理由は、

 

  • 葉の裏の気孔の開きが弱くなり(夜に向かって閉まる)、薬の吸収が悪くなる
  • 薬液が乾燥しないまま夜を迎えると、水滴がついたままになり、病気の発生しやすい状態となる。

ためです。

 

その②:防護具を身に着けても作業しやすい

 

薬剤散布の作業は汗をかきやすいです。

 

涼しい時間帯に作業をする事で、作業者の体にかかる負担が小さくなります。

 

マスクや、防護服など、たくさんの防護具を身につける必要があるからです。

 

天気が良く、気温が高い中の作業となると、熱中症のリスクが高まり、相当な重作業となります。

 

野菜への作業の効果も大切ですが、まずは自分の健康が何より大事です。

 

その③:ドリフトが起きにくく、人の活動も少ない

 

ドリフトは、自分の散布した薬液が他の圃場の野菜にかかる事です。

 

この事により、適用にない野菜に薬液がかかるなどの問題がおき、周囲に他の種類の野菜がある場合は注意が必要です。

 

早朝は風が弱い事が多く、ドリフトを防ぎやすくなります。

 

また、ドリフトは野菜だけでなく、人への対応をする必要があります。

 

家庭菜園など、住宅地の中での栽培となると、畑の近くを人が通る事もあると思います。

 

早朝の時間の作業であれば、人通りが少ないため対策となります。

 

散布の方法

 

ここからは、実際の散布の作業でのポイントについて解説します。

 

葉の裏にもしっかり散布する

 

葉の表だけでなく、裏にもしっかりかけます。

 

特に、葉の裏には気孔があり、表面よりも吸収されやすいこともあるので、

葉の裏への散布は重要です。

 

病状が発生していない箇所もしっかりかける

 

すでに病気や、害虫が発生している場合、症状がでている場所へ重点的に散布しがちですが、

 

症状が出ていない葉、茎、花など、株全体にむらなく散布する事が大事です。

 

その時発生していない部位にも、この先、病気が広がっていく事もありますので、事前に薬剤を散布する事が予防につながります。

 

 

薬剤散布に利用する資材

薬剤散布に利用する資材

 

薬剤散布の作業の際に必要な資材を紹介します。

 

希釈済みの薬剤

 

家庭菜園など規模の少ない栽培に向けて、

予め適切な倍率で希釈されている商品もあります。

 

スプレーのボトルで販売されているので、購入後すぐに利用でき便利です。

住友化学園芸 殺虫殺菌剤 ベニカグリーンVスプレー 1000ml

 

霧吹き

 

少ない量の薬剤散布に向きます。

希釈の際に少ない農薬を測定するため、スポイト電子はかりがあると便利です。

ハンドスプレー

 

蓄圧式噴霧器

 

少ない面積の栽培に向くタイプ

プレッシャー式噴霧器

 

背負噴霧器

 

タンクを背負って使用するタイプ。

充電式のバッテリーや、ガソリンエンジンを動力とします。

充電式噴霧器

 

動力噴霧器

 

ガソリンエンジンや、モーターを動力とするタイプです。

エンジン式噴霧器

 

静電気噴霧器

 

霧状となり噴霧される薬剤を帯電させて、対象の作物への付着を促進するタイプです。

 

薬液の利用量節約、ドリフト対策へ有効な資材です。

静電ノズル 3頭口

 

農薬用流量計

 

薬剤散布をしながら、散布量を確認できる機材

 

薬害を防ぎ、作った薬剤を無駄なく使い切るために有効です。

農薬用流量計 防除ナビ

 

薬害の発生と対策

薬害の発生と対策

 

薬剤散布をする時は、薬害に気をつける必要があります。

 

薬害は、散布された薬により葉の一部に枯れの症状が出る事です。

 

せっかく、防除のために行った薬剤散布の作業も、葉に傷ができる事でさらに病害を誘発する事もありますので、注意する事が必要です。

 

ここでは、現場の作業をする際に原因となりなりやすいものを紹介します。

 

散布の時間帯

 

すでに解説しましたが、

 

日中の気温が高く、太陽が高い位置にあり日差しが強い時に作業をすると起こりやすいです。

 

散布後の水分の蒸発により、規定以上の高濃度で葉に吸収されるためです。

 

早朝など涼しい時間に作業を行います。

 

 

薬剤の混合

 

薬剤散布をする際に、作業を効率化するために、

数種類の薬剤を混ぜて使用する方法がよく行われます。

 

 例えば、

  • ①殺虫剤と②殺菌剤
  • ①殺虫剤と②殺虫剤(①とは違う成分のもの)
  • ①殺虫剤と②殺菌剤と③葉面散布剤(肥料分)

 

農薬の種類には、他の薬剤と混合すると薬害の発生がしやすくなるものがあります。

 

代表的なものは、ボルドー液(銅剤)などです。

 

農薬によって、混合できるものできないものもありますので、各商品の解説を参考にします

 

また、展着剤の利用によって、薬害がでる場合もありますので、注意が必要です。

 

しおれをなくしてから行う

 

株が萎れていると、通常の状態よりも葉からの水分の吸収が強くなります。

 

その際に、薬剤を散布すると、

薬液の吸収が強くなり、薬害の発生につながります。

 

萎れている時、薬剤散布後に萎れがおきそうな場合は、事前に十分な灌水管理を行うなどで対応します。

 

戻りがけに気をつける

 

戻りがけは、一度散布した後に、もう一度散布する事です。

 

農薬の種類によっては、この散布の仕方は薬害を発生しやすなります。

 

特に注意が必要なのは、

乳剤です。

 

予定していた全ての株への散布が終わった際に、薬液が残る場合があると思います。

 

捨てるのはもったいないからと、使いきるまで散布する時などは注意が必要です。

 


 

これまで薬剤散布について、解説しました。

 

自分で栽培しているトマトの収穫が難しい場合や、プロの生産者が育てたトマトを食べててみたい時は、野菜の宅配サービスの利用もオススメです。
らでぃっしゅぼーや(定期宅配コース)

 

以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。

 

とまと家・中島がお届けしました。

 

Happy Tomating!!

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