トマトの水耕栽培をする時は、やっぱり肥料の使い方って大事ですよね?
「水耕栽培なので使用する肥料の種類が、液肥になるので、土耕栽培のように土の中に粒状の肥料を混ぜる方法は使えないよなー」ぐらいは、想像がつくのですが、実際に水耕栽培を始める時って、どのように肥料を準備すればよいのかわかりません。
水耕栽培の肥料について、ざっくりネットで調べたのですが、覚える事がいっぱいありそうです。
トマトの水耕栽培をする際に、最低限必要な事だけ知りたいです。
このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。
この記事を書いている僕は、17年間トマト栽培を行っております。
国内の種苗会社や、農業生産法人で北海道を中心に海外も含め、トマト栽培やトマトの研究を行い、現在は札幌市でトマト農家をしています。
このブログでは、自分の栽培経験を生かし、生産者の方や家庭菜園の方の疑問、質問に答える形でトマトの育て方等と紹介しています。
トマトに限らず、野菜の栽培を行う場合は、まずは土耕で栽培方法を覚えて、必要があれば水耕栽培を行うという事が多いと思いのではないでしょうか。
トマトの土耕栽培の経験があれば、そのほとんどを水耕栽培で活用する事ができますが、
肥料の使い方や考え方は、水耕栽培ならではのものがあります。
トマトの水耕栽培用の肥料を扱う中で、特に重要な事は、
- ①:レシピ(肥料設計)の考え方
- ②:濃縮肥料の作り方
- ③:培養液(灌水用の水)の作り方
です。
今回の記事では、トマトの水耕栽培を行う際の肥料に関係する重要なポイントを3つにしぼり、なるべく簡素に解説していきます。
今回紹介している内容について、もっと詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
トマトの水耕栽培肥料の作り方【原液肥料作成から培養液として利用するまでを解説】
ポイント①:トマト水耕栽培肥料のレシピ(肥料設計)の考え方
トマトの栽培では肥料設計を決めて、肥料の管理を行う事がほとんどです。
この肥料設計で利用される単位が、水耕栽培と、土耕栽培では違うものとなるため、その事を知ることが重要です。
土耕栽培の肥料設計の単位は「重さ」を使う
土耕栽培の場合、苗定植前の畑に元肥を施しますが、その際には、まず、肥料設計決めて、どの種類の肥料を、どの程度の量で施すのかの基の情報とします。
例えば、
そして、
土耕栽培の追肥の場合は、多くの場合チッソ(N)のみの成分量を基準にします。
例えば
土耕栽培の肥料設計では単位にkg/10aなど、成分の重さを利用します。
水耕栽培の肥料設計の単位は「イオンの数」を使う
説明をしやすいように、土耕の肥料設計の内容を先に解説しましたが、
水耕栽培の肥料設計に利用する単位は、多くの場合でme(エムイー)を使うという事が、大事なポイントです。
水耕栽培を行う際も、肥料設計を作り、その内容を基に培養液(肥料を水に溶かして実際にトマトに灌水するもの)を作成します。
その際に、
肥料設計に利用する単位は、多くの場合でme(エムイー)を使います。
meは、一定の水の中に肥料のイオンが何個あるかと示す単位です。
水耕栽培の場合、肥料は全て水に溶けた状態で施されるため、この単位が利用されます。
水耕栽培で利用されるの肥料設計の例
参考までに、園芸試験場が作成した、肥料設計(処方例)を紹介します。
土耕栽培の説明に合わせて、N、P、Kのみ紹介しますと、
という設計となります。
もしも土耕栽培の感覚で水耕栽培の肥料設計を作ったら。。
説明を簡易にするために、単体の肥料で説明します。
硝酸カリの保証成分は、
- チッソ:13%
- カリ:46%
となります。
土耕栽培の重さを単位とする肥料設計では、それぞれの割合が、
となりますが、
水耕栽培のイオンの数を単位とする肥料設計では、それぞれの割合が、
となります。
このように、
水耕栽培では、土耕栽培は違う方法で肥料設計が示されていますので、
色々な資料や情報を利用する時は注意する必要があります。
ポイント②:トマト水耕栽培用の濃縮肥料の作り方
トマトの栽培の時期や、栽培の目的に応じた肥料設計を決めた後は、その設計に従って濃縮原液肥料を準備します。
トマトの水耕栽培で、トマトに灌水として肥料を含んだ培養液を作る時は、
予め濃い濃度で水に溶かした濃縮原液肥料を準備し、原水に混合して利用する方法が一般的です。
よく液肥灌水として利用される、500〜1,000倍程度の濃度では問題ないですが、高濃度で肥料を水に溶かす場合は、
肥料の特性にそって必要な扱いをしなければ、高い品質の肥料を効率的に作る事ができません。
実際の現場での作成を例に、濃縮原液肥料の作り方を解説します。
濃縮の倍率は100倍が扱いやすい
一般的に利用されている濃縮の倍率は100倍です。
- 少ない倍率にすると、1回の原液肥料つくりで準備できる肥料は多くなりますが、肥料が水に溶けにくくなる
- 濃縮原液を原水と混合し、培養液にする場合は混合する機材(液肥混入機)を使用するので、それらの使用規格に合わせる必要がある
これらが主な理由となり、100倍が一般的な濃度の基準となっています。
濃縮原液肥料は、2種類に分けてしっかり溶かす。
カルシウムとリン酸を、100倍程度の高濃度で溶かした状態で混合すると、固まってしまい原液肥料として利用できなくなります。
他にも、硫酸とリン酸、鉄とリン酸もお互いが反応しやすく、安定した肥料の効果が出なくなるため、同じ液としての利用は避けます。
一般的な方法は、2種類をAタンク、Bタンクとします。
Aタンク
- 硝酸カルシウム
- 硝酸カリ
- 鉄(微量要素)
Bタンク
- 酸アンモニウム
- 硝酸カリ(全体の半分を溶かす)
- 硫酸マグネシウム
- 微量要素
というように、肥料の成分に使用するタンクを変えて原液肥料を作成します。
市販されている、水耕栽培用の複合肥料もA,B液に分ける方法をとるものがほとんどです。
また、それぞれに肥料を水に溶けやすくするために、
- まず溶けにくい硝酸カリから水に溶かし、その後に他肥料を加え溶かす
- 溶けにくい硝酸カリは、A、Bそれぞれの肥料に分けて溶かす
という方法をとると、品質の高い原液肥料なりやすいです。
ポイント③:トマト水耕栽培肥料の培養液の作り方
トマトの水耕栽培での培養液作りは、土耕栽培の液肥作りに近い作業です。
しかし、水耕栽培の場合、原液の肥料が2種類ある事、培養液の肥料濃度の単位にECを利用する点に注意する必要があります。
培養液の肥料濃度はECで示す。
ECは、培養液全体のイオン濃度を表すため、それぞれの要素の濃度はわかりません。
土耕栽培は、液肥で追肥の場合もN成分で1kgというように重さを基準にする事が多いの事に対し、
水耕栽培の場合、灌水の方法は、
どれだけのEC濃度の培養液を、どの程度の量(何リットルなど)与えたかというように扱われます。
濃縮原液はABそれぞれ同量加える
培養液を作る際は、ABそれぞれを同量づつ加えて濃度の調整を行います。
トマト水耕栽培用の肥料について、解説してきました。
下記の記事では、今回紹介した内容をより詳しく解説していますので、こちらも参考にしてみてください。
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らでぃっしゅぼーや(定期宅配コース)
以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。
とまと家・中島がお届けしました。
Happy Tomating!!