その人は、たわわに実っている自慢の果房を見て、「果実多く成らせすぎ、摘果したほうがいいよ」と言われました。
こんなにかわいい果実を収穫前にとるなんて、あり得ません。
摘果の管理ってそんなに大事なんですか?
このような疑問をお持ちの方へ向けて、この記事を書きました。
この記事を書いている僕は、北海道を中心に海外含め、17年間トマト栽培を行っております。
国内の種苗会社や、農業生産法人で北海道を中心に海外も含め、トマト栽培やトマトの研究を行い、現在は札幌市でトマト農家をしています。
このブログでは、自分の栽培経験を生かし、生産者の方や家庭菜園の方の疑問、質問に答える形でトマトの育て方等と紹介しています。
大玉トマトの栽培の場合、
僕は特別な理由がない限り、きっちり摘果する事をおすすめします。
なぜなら、栽培全体の成績が良くなるからです。
確かに、摘果する事によって、対象の房の果実の数は減ります。
しかし、果実を減らす作業は、その後に収穫する果実の数、量、品質を上げる事につながるのです。
一時的には、収穫量が減りますが、全体的には収穫量が上がるための作業。
それが、摘果です。
「せっかく実っている果実を無くすのはもったいない!」
という気持ちもわかりますが、
栽培期間全体で良い生育、収穫にしたい場合は、摘果の実施をオススメします。
今回は、摘果の効果や実際の方法についてお伝えします。
家庭菜園でトマトの栽培がしたいけど、畑が準備できない方は、レンタル式シェア農園の利用がオススメです(手ぶらで行けて栽培サポート付きです)。
トマトの摘果は長期の安定収穫につながる
トマトの摘果管理は、着果した果実を、収穫を待たずにある程度大きさの段階で取り除く作業です。
「せっかく、着果したんだからそのまま実らせて収穫したい」
と思うかもしれません。
しかし、この摘果作業を行う事で大きなメリットが生まれます。
それは、
長期の収穫を安定して行えるようになることです。
摘果作業をした、場所の果実は収穫できる量が減りますが、
栽培期間全体での収穫量を上げる事につながります。
では、どのような仕組みで全体の収穫量が上がるか解説しましょう。
果実の着果数の管理で草勢を調整できる
果実を生長させる事は、トマトが最もエネルギーを必要とする事です。
トマトの株の中には、いくつかのパーツがありあます。
- 葉
- 茎
- 花
- 果実
- 根
この中で、生長するのに最もエネルギーが必要なものは、果実です。
しかも、果実はエネルギーをもらうだけで、作る方の働きはしません。
例えば、
葉は多ければ、光合成の量が増え、体内のエネルギー源を作ります。
根も、増えると、吸収できる水や肥料の量が増え、体内のエネルギー源増加につながります。
でも、
果実はもらうだけです。
トマトにとって、種子を作るのに直接関係する果実は、とっても大事です。
株の中の養分は果実で優先的に使われます。
株の中で、生長にエネルギーが必要な果実の量を少なくすると、株の中で使えるエネルギー量が減りづらくなります。
そして、その分を草勢維持に使う事ができます。
収穫量を上げるには、ちょうど良い草勢管理が必要
「草勢が強ければ、たくさん果実を成らす事ができて、いっぱい収穫できそう」と思うかもしれません。
しかし、強いすぎる場合に起こる弊害もあります。
そのため、栽培中はちょうど良い草勢の範囲で維持する事が、大事です。
さきほど、説明したとおり、
果実の数は、トマトの草勢に大きく関係します。
そして、その果実の数を調整できる摘果は、トマトの草勢管理 に役立つ作業となります。
草勢が弱い時は→多めに摘果
草勢が強い時は→少なめに摘果
その場に応じて管理を行う事ができます。
トマトの摘果管理の方法
では、実際の摘果の作業方法について解説していきましょう。
大玉トマトは摘果する、ミニ・中玉はしなくてOK
基本的に、ミニ、中玉トマトの品種では摘果しなくてもOKです。
これは、ミニ、中玉の品種は1果房あたり全体の、果実の重量が少なく、株への着果負担も少ないためです。
大玉トマト品種1段目の例:
1,000g分の着果負担が、かかります。
ミニトマト品種1段目の例:
200g分の着果負担が、かかります。
この例では、ミニトマトの1段目の果実の重量は、大玉トマトに比べ、5分の1となります。
上の段に進むと、ミニトマトの果房全体の花数も増え、かかる着果負担も増えますが、
収穫が始まる時期までは、花房の段数が増えるにつれ、株の草勢も強くなりますので、摘果をしなくても耐える事のできる株の状態になっています。
ただ、ミニトマト、中玉トマトでも、
極端に草勢が弱い状況の場合は、摘果が必要です。
例えば
- 開花している花房の近くの茎の太さが、5mm未満
- 咲いた花のほとんどが着果せず、落花する
場合です。
摘果は、1段目の果実がゴルフボール大になってから
大玉トマトの摘果を行う目安の時期は、
果房の中の一番大きな果実が、ゴルフボール大になった時です。
この頃に摘果を行うのは、
- 果房の中の着果がある程度揃っている
- 変形果、チャック、窓空き果など障害果の見分けができる
ためです。
この時期より遅くに管理を行うと
この時期より早くに管理を行うと
着果が揃っていなく、目標の着果数を確保できない場合がでる
障害果の見分けを行いにくい
1段目から最後に収穫するまでの、全ての段の果房を、この時期を目安にして行います。
基本は3〜4果残し、草勢によって要調整
摘果後、1果房に正常果実を3〜4果残す方法を基準とします。
段数によって残す果実の量を調整するのが一般的です。
基本の目安は以下のとおり。
・1〜2段目:3果
・3段目以降:4果
この基準は、
- 1〜2段目の果実がゴルフボール大の時
- 3段目以降の果実がゴルフボール大の時
それぞれの時期の、トマトの株の大きさ(葉の大きさ、枚数、草丈)を比べると、
段数が進むほど、葉が大きく、数も多くなるので、多く着果させても草勢を維持できるという考え方です。
しかし、4、5段以降など、段数が進むと4果の確保が難しい場合があります。
例えば以下のような場合です。
- 着果している果実の数が3〜4果未満
- もともと着果している果実の数が、3〜4果未満
- 障害果を摘果すると、3〜4果未満になる
このような場合は、果実数が基準の数より少なくなっても、障害果を摘果する事を優先する方が良いです。
その段で少なくなった収量は、その先の段でリカバリーできるからです。
摘果する果実の選び方
摘果する(取り除く)果実の優先順位は、
- 障害果(変形果、チャック、窓空き、尻腐れ、灰色カビ病が発生)
- その時点で小さい果実
とします。
その他の注意等として、
・3〜4果の果実数を確保できる場合は、着果前の花も取り除く(その後着果するかもしれないので)
・極端に大きい果実が1個ある場合は、それを摘果して果房全体の果実の大きさを、揃えても良い
トマトの摘果をあえてしない場合もある
これまでは、摘果の管理を行う事をオススメしていましたが、トマトの基本の栽培管理の中でとしています。
場合によっては、摘果の管理を行うと逆効果になる場合もあるので、紹介します。
早い時期に出荷できる低段果実で高単価を狙う場合
トマトは出荷する時期によって、商品を納品した時の金額が変わります。
1段目や2段目など、低い段数の果実を出荷する時に、高い金額で納品でき、その条件が生産者さんにとって都合が良いのであれば、
対象の段数の果房で摘果はせずに、収量を増やしたほうが良いと思います。
この場合は上の段では草勢が落ち、収量を落とす原因になりますが、そこは生産者さんの栽培と営業方針しだいです。
低段密植栽培の場合
栽培方法の中には、1〜2段までというように、計画的に低い段数の果実のみを収穫し、苗の植え替えの頻度を上げる事で、収量と品質を安定させるものがあります。
この栽培方法の場合は、収穫できる期間が少ないので、摘果はせずに、着果した全ての果実を収穫するようにします。
これまで、摘果の重要性、作業の方法について、解説しました。
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以上、「トマトがあれば〜何でもできる!」が、座右の銘。
とまと家・中島がお届けしました。
Happy Tomating!!