このような、疑問をお持ちの方へ向けてこの記事を書きました。
この記事を書いている僕は、北海道を中心に海外含め、17年間トマト栽培を行っており、ほとんどの栽培で摘芯作業を行っており、その効果も確認しています。
トマト栽培の摘芯(てきしん)作業の方法【具体的解説】
そもそも、摘芯とはどのような作業の事をいうのでしょうか?
トマト栽培の摘芯は、主枝や、わき芽の成長点を取り除く作業です。
主に、主枝の成長点(茎の一番上の芽)を取り除く作業です。
成長点がなくなる事で、それ以降の新たな茎葉の展開はとまり、新たな花の着生もなくなります。
新たな花が生まれないという事は、もちろん新たな果実もつきません。
摘芯作業は、トマト栽培を終了させるための準備作業にもなります。
※株全体の生育の勢いを調整するために、あえてわき芽を残し、その芽伸び具合をコントロールするために摘芯作業を行う事もあります。
摘芯作業を行う適正な時期は?
- トマトの茎が伸びて管理する人よりも高い場所まで伸びて、管理作業が難しくなる時
- 収穫最終予定日の2ヶ月前
- トマトの生育可能時期が終わる2ヶ月前
トマトの茎が伸びて管理する人よりも高い場所まで伸びて、管理作業が難しくなる時
直立にトマトの茎を誘引(茎を支柱等に固定し仕立てる)し、生育が順調であれば管理する人ほどの草丈になります。
高い場所の管理は作業の効率が悪くなるため、管理者の手の届く範囲を超えそうになるタイミングで摘芯作業を行います。
トマトの草丈が人の目線くらいになる目安の時期は、直立に誘引を行い、生育が順調な場合6〜8段目の花房の花が開花する頃となるケースが多いです。
収穫最終予定日の2ヶ月前
最後の収穫の時期のスケジュールが決まっているのであれば、その最終収穫予定日の2ヶ月(約60日)前を基本(摘芯作業後の気象条件が夏季で、温度が高く、日平均気温25℃程度の日が多い場合は45日程度、摘芯作業後の気象条件が秋季で、温度が低く、日平均気温15℃程度の日が多い場合は75日程度)とし、条件によって調整します。
この60日(45〜75日)という数字は、トマトの花が開花してから収穫可能となるまでの目安の日数となり、最後に収穫を行いたい日から逆算し、開花から収穫可能までの日数が不足する花(果実)の場合は、収穫できない可能性が高くなります。
トマトの生育可能時期が終わる2ヶ月前
②の場合は栽培管理を行う人がスケジュールを決める事を前提にしていますが、温室やハウスとボイラー等の加温の設備を利用しない場合は、気象の条件で栽培を続ける事ができない事もあります。
目安になる条件は、
- 露地栽培の場合、外気の最低気温が8℃を下回る日が週の半数を上回る。
- 無加温ハウス栽培の場合(内張ハウスやトンネル)、外気の最低気温が6℃を下回る日が週の半数を上回る。※もちろん加温設備が利用できる場合は、外気温の条件はなくなります。
これらの条件をもとに、栽培可能時期を設定し、②の開花後の目安日数を参考に摘芯作業の時期を決めてください。
摘芯作業の方法とは?【写真で解説】
開花直前の花房[参考画像:A]を基準とし、花房の上2枚[参考画像:BとC]の葉を残し、その上の成長点[参考画像:D](小さい花房[参考画像:E]含む)を取り除く。
作業の行う時期は基準となる花房が開花する前(この時期に作業を行うと、はさみで切るよりも指でつまむ方が楽に早く作業ができます)。
基準の花房の上2枚の葉が確認できるようになれば、その後すぐに作業を行う方が、より摘芯の効果が期待できます(将来取り除く葉茎に余分な養分がとられないため)
※成長点が小さい時につまんで摘芯すると、その下の葉がしっかりと大きくなるのかな?と心配になる事もあると思いますが、摘芯する時期は関係ないので積極的に早めの作業を行ってください。
摘芯作業を行った後に注意する事とは?
灌水、追肥の量を少なくします。
成長点は細胞分裂が非常に活発に行われており、トマトの株内の養分が多く使われている場所です。
その部位がなくなり、その後の茎、葉の生育量が極端に少なくなりますので、それまで与えていた灌水や追肥(肥料)の量を少なくする方が良いです。
同じ灌水、追肥で管理を続けると裂果の発生や、尻腐れ果の発生のリスクが高まります。
トマト栽培の摘芯を行って、期待できるトマト生育への効果
- 栽培可能期間内に、葉で生産される養分を無駄なく利用し(収穫できない果実を少なくして)収穫できる果実の品質、収量を向上させる事ができる。
- 実っている果実の色つき、色まわりが早くなる。
- 主枝の伸長がとまるため、その後の誘因、芽かき、着果促進の管理作業の必要がなくなる。
栽培可能期間内に、葉で生産される養分を無駄なく利用し(収穫できない果実を少なくして)収穫できる果実の品質、収量を向上させる事ができる。
栽培可能期間中に収穫できない果実が実っているにも関わらず栽培を続けると、無駄な養分を使用してしまう事になります。
摘芯を行う事で、限られた葉から生産される限られた養分を収穫可能な果実で利用できるようにし、品質や収量を上げる努力をしたほうが得策といえます。
【摘芯作業を行った後に注意する事とは?】で解説したように、成長点は細胞分裂が非常に活発に行われており、トマトの株内の養分が多く使われている場所です。
その成長点がなくなる事によって、その分の養分が他の部位で使用される事になり、追肥を与えるくらいトマトに生育を促進する効果があるともいわれています。
実っている果実の色つき、色まわりが早くなる。
①の品質と収量の向上と同じ理屈ですが、果実の着色や色のまわりが促進され収穫時期が早くなります。
摘芯作業を行った後に、色まわりの状況を意識して観察すると、摘芯作業前にくらべ早まる事が実感できると思います。
ただ、作業を行う時は、この効果も意識して出荷の予定を組むと良いでしょう。
主枝の伸長がとまるため、その後の誘因、芽かき、着果促進の管理作業の必要がなくなる。
摘芯をした後は、その茎の場所からは新たな葉は展開しませんし、主枝の伸長もほとんどしません。
ですので、摘芯をおこなった茎の場所からの、枝を支柱等に固定する誘引作業、芽かき、も行う必要もなくなります(摘芯作業を行う時点で各管理作業が遅れていればもちろん別ですが)。これにより必要な栽培管理作業が少なくなります。
トマト栽培の摘芯を行えなかった場合の対応方法
摘芯作業は絶対に必要か?
摘芯作業を行う事よりも、定期的に灌水、追肥の管理を行う事のほうが重要です。
摘芯作業行わなかった時、または行っても栽培予定(可能)期間内に、赤く着色しない果実が多く残りそうな場合の対応方法
その時点で、摘芯作業を行っても、そのシーズンの栽培可能な期間を考えると、着色しないままの果実が残りそうな場合もあると思います。
そんな時に、行うと着色促進となる方法を紹介します。
- 着色促進に効果のある調整材を使用する。
- 被覆管理(トンネル、べたがけ)を行い、温度をかけて着色を促進させる
- 果実が緑色の状態で収穫して、料理等に使用する。
着色促進に効果のある調整材を使用する。
被覆管理(トンネル、べたがけ)を行い、温度をかけて着色を促進させる
こちら2点の内容は、トマトを赤くするための記事で解説してますので、こちらを参考にしてください。
トマトの苗を植えて、しばらく経ちます。果実は収穫できそうな大きさになっているのですが、なんだかトマトが赤くなりません…果実が実ってから、もう1ヶ月以上経つと思うのですが、赤くなりません。年によっては、気づいた時に[…]
果実が緑色の状態で収穫して、料理等に使用する。
緑色の果実の状態で収穫して利用する。
赤くなる前に収穫して利用する事も活用できる方法となります。
緑色のトマトの果実の代表的な利用方法は、ジャム、ピクルスや浅漬けなどがあります。
料理レシピ紹介サイト等でも、利用方法が紹介されていますのでぜひチェックしてみてください。